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みなさんの組織は、個の力はうまく掛け合わさっていますか?
最近の潮流として、個別の社員の能力アップだけでなく、組織としての力をアップさせる必要性を感じている企業が増えてきています。
なぜ組織の力を高めていくことが必要なのか
これは、先が読めず、複雑化する世の中において、
新サービスを、早く、安く、良いものを届けるためには当然のことかもしれません。
マシューサイドが著作の、ベストセラーになった「多様性の科学(ディスカバー・トゥエンティ―ワン出版)」では、複数の視点で問題を解決する組織が今後生き残っていくといっています。
そして、その複数の視点を得るためには、複数の人間の認知的多様性が必要といっています。
これは簡単にいってしまえば、それぞれの考え方や捉え方の違いを活かそうというものです。
モノが溢れてしまっている今の時代、同じようなサービスを提供していても他社との差別化は図れません。今後はよりサービスも個別化、多角化していくことが予想されます。そうなってくると、一人ひとりの力を掛け算の関係性にしていかないと、世の中の圧倒的な早さにもついていくことができなくなってしまいます。
実際に、Googleではチームの可能性を信じ2012年にチームの生産性を高める要因を調べた
「プロジェクトアリストテレス」というプロジェクトを立ち上げました。
【参考:https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/introduction/】
こちらは結果としては「心理的安全性」というものがチームの生産性に寄与することが発見されました。
興味がある方は是非ともそちらを参考にしてみてください。
個々の人材育成の限界
組織の力を上げていくためには、どういった取り組みができるでしょうか?
簡単に考えられることに、長年取り組んできたこととして「人材育成」が挙げられると思います。
これは、社員の個々の能力アップを図る中で、全体の総和を上げていこうというものです。
多くの企業が新人研修から階層別研修、テーマ別研修を設定していることをみてもその必要性を
感じている企業が多いことがみえてきます。
当社も様々な顧客に向けて研修の企画・運営をしていることからも、まだまだ人材育成自体のニーズや
必要性は高いと感じております。
ただし、すべてが個々の人材育成でなんとかなるかといえば、そうではないかもしれません。
マサチューセッツ工科大学(MIT)MITにおいて生産性の実験が行われました。
その実験内容は、ボランティアを数百人集め 複数のチームに分けて非常に複雑で難しい課題を与え、
どういった属性のチームが生産性が高いかを測ろうというものでした。
結果としては他のチームよりもはるかに好成績を上げるチームが現れました。
その好成績を上げたチームは とびきり高いIQの保持者がいるチームではなく、また全員のIQの総和が最高というチームでもありませんでした。
好成績だったチームには3つの特徴があったそうです。
好成績だったチームの3つの特徴
- 第1にお互いに高い社会的感受性を示していたこと。
- 第2に 好成績チームではメンバーに 均等に時間が配分され、全ての人が意見でき、仕事をさぼる人もいなかったこと。
- そして第3に好成績なチームほど女性がたくさんいたこと。
第3の理由はよく分かっていないそうなのですが、この実験の印象深いところは鍵となったのが社会的なつながりということです。
この話は心理的安全性にもつながりますが、社会的なつながりができているチームはお互いに、思った意見を言っても許される状態となり、必然的に多様な意見がでて、解決策の立案につながったというものです。
この事例から言えることとして、いくら一人ひとりが優秀な人材となっていったとしても、その組織やチームが社会的なつながりが持てていないと最大限の力が発揮されない可能性があるということです。
頭ではわかっていても、実際に職場に戻ったときに、どうすればいいでしょうか?
その答えを持ち合わせている方は少ないのではないでしょうか。
組織の力を上げていくために
組織の力を上げていくための考えに、「組織開発」というものがあります。
日本では、1960年代から70年代に最盛を迎えた後、徐々に衰退していきましたが、
2015年頃に南山大学の中村和彦教授が「入門 組織開発(光文社新書出版)」を発行した時期を堺に復興していきました。
では具体的に組織開発とはどういったものなのでしょうか。
組織開発の概要
組織開発とは前述の中村教授は著書の中で「組織開発とは、組織の健全さ、効果性、自己革新力を高めるために、組織を理解し、発展させ、変革していく、計画的で協働的な過程である」といっています。
組織開発は人材育成とは違い、個の方々を対象にはしますが、効果を出す先が組織となる点に
大きな違いがあります。
関連する業界に対する知見や経験を含めた高い能力が求められ、現場で多くの関係者をまとめてリードするリーダーシップも求められるでしょう。責任ある重要な立場なので、最高デジタル責任者などの経営に携わる立場の人が担うケースもあります。
組織開発のアプローチ方法
組織開発としてのアプローチ方法としては、主に2つあります。
ひとつは「診断型組織開発」ともうひとつが「対話型組織開発」です。
「診断型組織開発」では、まずは事前に組織の状態を測る(サーベイ)ことをしてから、そのサーベイ結果を分析して、組織へフィードバックし、そこから具体的なアクションをしていくという流れとなります。
初期の状態を測る方法としては、組織診断ツールを利用したり、インタビューを実施したり、観察したりといったものがあります。このように組織の状態をざっと確認してからアクションを考えていく事に重きを置いていることから、診断型と呼ばれます。
「対話型組織開発」は、その診断がないものをいいます。
組織の中にいるメンバーの対話を通じて、組織の状態を明らかにしていき、変革してくことに重きがおかれています。
ここで注意したいのが、診断型も基本的に対話によってフィードバックや、アクションを考えていくことに違いはありません。
大きな違いとしては、当事者であるメンバーが自身が、対話を通じて自身や組織の課題について考え、明らかにしていくことに大きな違いがあります。
診断型では、専門のODコンサルタントが診断を進めていきます。
組織開発は外部を使うか、内部で行うか
(1)外部
組織開発の実行については、内部で行う会社もあれば、外部で行う会社もあります。
ひとつ注意したいのは、外部を使うにしても、あくまでも外部はサポートをしてくれるのみであり、自分達で会社を良くしようとすることは必須であるということです。
外部を使う際には、多くの組織開発会社がありますので、調べてみてください。
ここでも、大事なこととして、本来の組織開発は自己革新力を高める事ですので、
いつまでも頼らないといけないような依存型の仕組みを用意している会社には注意が必要です。
最終的には、自社内で組織開発的な取り組みができるようになることが強く・柔軟な組織をつくっていく事につながります。
外部はあくまでサポート要員であると、腹をくくって組織開発を進めていきましょう。
(2)内部
社内で組織開発進めていく際には、大きくわけて2つの進め方があります。
組織のリーダーが進めていく「リーダー養成型組織開発」と、組織全体にコンサルタントを置く
「内部ODコンサルタント」です。
「リーダー養成型組織開発」では、各部署のリーダーが、自組織に対して自らがチェンジエージェント(変革推進者)となって組織を良くしていく流れとなります。
「内部ODコンサルタント」は組織全体に組織開発の推進の部署や、役割をつくってしまい、その人たちが組織開発が必要な部署やチームに入っていく形をとります。
組織開発を進めていく上での大事な価値観
組織開発には様々な手法があります。
前述の中村教授は、それら様々な手法を包み込むイメージから組織開発を「風呂敷」に例えています。
立教大学の中原淳教授は、様々な手法を受け止める「傘」に例えています。
要は、それくらい多くの手法があるので、これが「組織開発」だ!という方法はありません。
だからこそ、大事にしないといけないのが、組織開発の根底に流れている価値観です。
価値観を理解していないのに手法に飛びついても、おそらくその組織開発は失敗に終わってしまうでしょう。
やる気のないサッカー少年に、親が無理やりに良いと思われる練習をさせ、プロにさせようとしても多分プロにはなれませんよね。
組織開発の研究者であるロバートマーシャクは以下の4つが大事な価値観であるといっています。
①人間尊重の価値観 ②民主的な価値観 ③当事者中心の価値観 ④社会的・エコロジカル的志向性
①人間尊重の価値観とは、本来人は善の心を持っており、適切な場や経験を積ませれば、自ら適切な動きを取ってくれるであろうというものです。
②民主的な価値観とは、何か物事を決定していく際には、多くの人が関わり、多角的な意見を出すことでより適切な解が出せるであろうというものです。
③当事者中心の価値観とは、誰かコンサルタントが組織開発をサポートしたとしても、あくまでもサポートであり、中心となるのは組織のメンバー達であり、自分達が改革していく必要があるということです。
④社会的・エコロジカル的志向性とは、③とは言いつつも、その中で出していく解については、自分達が得するわけではなく、社会性を持たせる必要があるということです。
要約すると、人を信じ、自分よがりにならずに、自ら動いていくということが大切な価値観といえるかと思います。
終わりに
ここまで、お付き合いいただきありがとうございます。 組織開発には、様々な手法がありますが、今回は取り上げませんでした。 それは、手法に囚われるようにはなってほしくなかったためです。
まずは、自組織を良くしたいという想いが組織開発の入り口となってきます。 少しでも、そういった想いがあるのであれば、まずは周りの同僚を巻き込み、 小さいことから組織開発を進めてみてはいかがでしょうか? より良い会社にして、働きやすく且つ社会にも良い影響を与えていきましょう!
この記事を書いた人
栗林 陽
(株)TOASU DI室リーダー/チーフディレクター
大学卒業後、大手IT業界、海外経験を経て現会社へ入社。日本の継続的、健康的な成長を願い、企業向け研修の企画、営業に従事。その後、営業だけでなく0からの研修企画、作成が認められ、社内での新規事業のリーダー職を担う。現在は「チーム」へ向けた今までにないサービスを作成中。座右の銘は「少しでも良い社会のために」。本業の傍ら、地域活性にも参画。大学まで続けたサッカーは今でも毎週行っている。