やる気と心理的安全性を高める体の関わり

やる気と心理的安全性を高める体の関わり

みなさんは、やる気を出そうと思ったとき、何をしていますか?

人によっては、「気合で何とかする」「やる気なんて関係ない、やるかやらないかだ」「エナジードリンクを飲む」などがあるかもしれません。

ただ、実際にやる気を促すことは非常に難しいことが多いのではないでしょうか?

今回は、やる気を高めていくためにも、心理的安全性の高さが必要だということと、そこには体の関わりが非常に重要であるということをお伝えしていきたいと思います。

やる気のステップ

まず最初に考えなければならないこととして、やる気にもいくつかの状況に応じた段階がある、ということです。

「モチベーション3.0」という副大統領のスピーチライターなどを勤めたダニエルピンクが著した本には、3段階あるといっています。

モチベーション1.0

これは人間は生物的な存在なので生存のために行動するというモチベーションです。

モチベーション2.0

これは人には報酬と処罰が効果的であるという皆さんにも馴染みが深いであろうモチベーションです。

モチベーション3.0

これは人には、学びたい、創造したい、世界を良くしたいという第3のモチベーションです。

それぞれ状況に応じて必要となるモチベーションが変わってきますが、ここで重要なこととして、複雑化した世の中において、解決策も正解が1つということはなく、正解を探求していく事が求められてきます。そこではモチベーション3.0が必要となってきます。

1940年代に心理学者であるカール・ドゥンガ―はある複雑な問題を解く実験において、解くスピードによって報酬がもらえるというグループと、何も報酬を提示しなかったグループを用意しました。

結果はどうなったでしょうか?通常であれば報酬をもらったグループの方が早く解けたのでは思ったかもしれませんが、結果としては何も報酬を提示されなかったグループの方が早く解けました。

一体何が起きたのでしょうか?

モチベーションに応じた脳の働き

脳には、様々な機能がありますが、主に3つの大事な働きがあります。

・脳幹

これは生命維持を司ります。人が意識しなくとも、自律神経やホルモン分泌などを制御する部分で、いわゆる爬虫類の脳と呼ばれます。

・大脳辺縁系

これは、情動や感情、記憶を司ります。快や不快の感情、食欲や性欲の制御する部分です。いわゆる哺乳類の脳と呼ばれます。

・大脳新皮質

これは、思考、注意、判断などを司ります。より高度な精神活動、創造性を制御する部分です。ここは人間的な脳と呼ばれています。

完全に一致するわけではないですが、モチベーション1.0は脳幹、モチベーション2.0は大脳辺縁系、モチベーション3.0は大脳新皮質が関わってきます。

これをもとに、さきほどのある複雑な問題の時に何が起きていたかを解き明かしていきましょう。報酬というものには大脳辺縁系が反応します。

脳は大脳辺縁系が優位に働いている状態です。しかし、本来解決しなくてはいけないのは複雑な問題であり、創造性が求められます。

そうなると大脳新皮質である人間的な脳を優位にする必要がありますが、報酬によってそうなっていない状態を作ってしまったのです。

このように、今までの生きてきた形からは直感に反するようなやる気や思考への影響が体や脳にはあります。

心理的安全性の必要性

ハーバード・ビジネススクール教授のエイミー・エドモンドソンは、病院での手術の結果において、実は小さい失敗が多いチームの方が成功の割合が高いことを見つけました。

これはどういうことかというと、失敗したことをオペを担当する手術医に気軽にいえるような関係性のチームだと、連携もスムーズとなり、結果的に手術の成功確率も高くなるというものです。

これをエイミー・エドモンドソンは「心理的安全性」が高い状態といいました。心理的安全性とは、自分の考えや意見などを組織のメンバーの誰とでも率直に言い合える状態のことを指します。2012年には、Googleがチームの生産性の高さに1番起因しているのが「心理的安全性」だということを証明しました。これによってビジネス界でも「心理的安全性」が多く取り上げられるようになりました。

では、実際にどうしていけば「心理的安全性」が高めていけるのでしょうか?

こちらについても体の関わりから考えていきましょう。

ホルモンの関わり

人の体には、複数のホルモンが分泌され、人の行動に大きな影響を与えています。

ホルモンの種類は100種類以上あるといわれていますが、ここでは心理的安全性に関わるいくつかのホルモンを紹介します。

・視床下部:ドーパミン 愛情や信頼を感じさせます。

・視床下部:ノルアドレナリン 意欲や活動を司っています。

・松果体:メラトニン 眠りを促します。

・下垂体:オキシトシン 愛情や信頼を感じさせます。

・腸:セロトニン 理性や感情をコントロールします。

・副腎:糖質/アドレナリン やる気を高めます。

・副腎:皮質/コルチゾール ストレスに対抗します。

それぞれが人が生きていく上で大きな影響を及ぼしていますが、心理的安全性にも深く関わってきます。

生き残りホルモンと生きがいホルモン

人のホルモンには2種類あることをご存じですか?

組織開発者である鈴木泰平さんの著書である「科学的に正しいチームメソッド30」には人には、生き残りホルモンと生きがいホルモンがあるといっています。

生き残りホルモンとは、自身の生存のためのホルモンです。ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールやノルアドレナリン等が含まれています。

主に生存への恐れを感じたとき、つまり生命の危機を感じたり、現状に対して不安を感じたりすると分泌されます。身体機能を向上させ、集中力を高めて目の前の危機に対応しようとするのです。この時に、消化や回復の優先順位が下がります。

昔は動物や不意の危険から身を守るために非常に役に立っていましたが、現代の危険が薄くなっている中では、体への悪影響も多くでています。例えば、上司からの叱責などを、身体への危険と捉えてしまい、そういったストレス状態が長く続くと、身体を壊してしまうのです。

脳の働きとしても、脳幹や大脳辺縁系が働いてしまう状態です。

生きがいホルモンは、自身の進化・繁栄のためのホルモンです。オキシトシンやドーパミン、セロトニンが含まれます。生存への喜びを感じたときに分泌されます。脳の働きとしては、大脳新皮質が働きやすい状態です。

心理的安全性を高めていくためには、この生きがいホルモンが重要となります。

生き残りホルモンが優位な状態になると、生きがいホルモンが抑制され、生きがいホルモン優位になってしまうと、生き残りホルモンが抑制されるという関係性なのです。

生きがいホルモンの分泌について

オキシトシン、セロトニン、ドーパミンを優位にしていくことが生きがいホルモンの分泌には重要ということでしたが、これらの分泌には順番があります。

まずはじめにオキシトシンが分泌されます。そしてそれにつられて、ドーパミンとセロトニンも分泌されるという流れになります。

セロトニンの効果によって自身の心は安定し、ドーパミンの効果によってワクワク感、そしてこの回路が反応し、よりオキシトシンを分泌したいと思うようになるという循環が起こります。

そして要となるオキシトシンの良質な分泌には、主観的な感情の共有が挙げられます。個人の価値観、実現したいこと、好きなもの・嫌いなものが共有される会話だったりします。

また、身体的なつながりでも分泌が高められます。それは、リラックスできる音楽だったり、お菓子を一緒に食べたり、いつもとは雰囲気を変えて、自然のある屋外で何かをしてみるといったことも効果的です。

この生きがいホルモンが分泌されやすい人間関係が築けていれば、自然と脳の働きも、大脳新皮質である人間脳が優位になり、創造性も生まれてきやすくなります。

今後のやる気の引き出しについて

本来、神経的に見れば、人は生まれつき主体的で挑戦を好む性質をもっているそうです。しかし、様々な人間関係や経験を通じて、あきらめることを覚えていきます。

それがいわゆるできないことを学習してしまう「学習性無力感」と呼ばれるものです。

今の日本には、「学習性無力感」を感じているビジネスパーソンが非常に多いのではないでしょうか?

あなたも、あなたの周りにもそういった方々がいるかもしれません。

まずは、周りの人のやる気をだして、創造性の高い仕事をしていきたいという人がいれば、まずはその周りの人達の話を共感して聞いてあげることから始めてみてはいかがでしょうか?

この記事を書いた人

栗林 陽

(株)TOASU DI室リーダー/チーフディレクター 

大学卒業後、大手IT業界、海外経験を経て現会社へ入社。日本の継続的、健康的な成長を願い、企業向け研修の企画、営業に従事。その後、営業だけでなく0からの研修企画、作成が認められ、社内での新規事業のリーダー職を担う。現在は「チーム」へ向けた今までにないサービスを作成中。座右の銘は「少しでも良い社会のために」。本業の傍ら、地域活性にも参画。大学まで続けたサッカーは今でも毎週行っている。

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