
皆さんの会社ではどういった研修を行っているでしょうか?
最近では、人を資本として見ることを提示した経産省からの伊藤レポートが出てきたこともあり、各社で社員研修が活発です。
その中でも、自社の多くの社員に提供できる社員向けの研修は、今後もより増えてくることが予想されます。
今回は社員研修にはどういった内容のものがあるのかを紹介していきたいと思います。
社員研修の種類
社員研修と一言で言っても様々な種類があります。
・スキルによる切り口
・対象者による切り口
・期間による切り口
いくつかの切り口がありますが、今回は代表的なものをご紹介していきます。
スキルによる切り口
学ぶ内容については、有名な切り口としてロバートカッツによる切り口が有名です。
これは個人が学んでいくために必要な枠組みを3つに切り分けています。
個人が学んでいくために必要な枠組み
- テクニカル・スキル (Technical skill)
- ヒューマン・スキル (Human skill)
- コンセプチュアル・スキル (Conceptual skill)
テクニカル・スキルは「業務遂行に必要な知識、技術」がこれにあたります。
内容には業務知識、技能、語学力、ITリテラシーなどが含まれます。
ヒューマン・スキルは「他人と共に、もしくは他人を通して働く能力と判断力」といったものがこれにあたります。
対人折衝力、交渉力、リーダーシップ力、プレゼン力などが含まれます。
コンセプチュアル・スキルは「テクニカルスキルやヒューマンスキル含めて複雑な問題を統合的に解決していくスキル」となります。
問題発見・解決能力、状況判断力、論理展開能力、意思決定能力、ビジョン構想力、戦略立案能力などが含まれます。
ロバートカッツは図にある通り、テクニカルスキルが経験の短い人を対象とし、経験が増えていくにつれてコンセプチュアルスキルが必要になると言っています。
しかし、昨今ではこの括りは経験の短い、長いでは切り分けられなくなってきています。特にJOB型企業においては、経験が長くても専門性に特化した人は多くなっていくでしょうし、逆に経験が短くても統合的な思考が求められる人もでてくるでしょう。
ただ経験を除いては、ロバートカッツのこの括りはわかりやすいので、とても参考にはなるかと思います。

対象者による切り口
対象者によっても、切り口が変わってきます。
主に下記の切り口が考えられます。
対象者による切り口
- 全社共通研修
- 職種別研修
- 職場内研修
全社共通研修は、会社として共通で提供している研修となります。
主に、階層別研修、年次研修、選抜者研修といったものがあります。
階層別研修は、役職毎に昇格時の役割認識や、能力アップのための研修がこれにあたります。
また、年次別研修では、新人研修や、30歳になった際のキャリア研修等、入社年次を基準とした研修がこれにあたります。
選抜者研修には、今後の会社を担うであろう方や、特殊な任務を担った方々へ届ける研修等があります。
最近では、パーパス経営やビジョナリー経営を掲げている企業では、企業の目的やビジョンを共有していくような研修も増えてきています。
職種別研修は、各職種の方々へ向けた内容となってきます。
例えば、営業であれば、営業力強化の研修や、IT技術者であればプログラミングを習う研修などがこれにあたります。
近年では、専門性の幅が増えてきており、職種別にしても一定の人が集まらなく、外部のオープン研修に出すといったことも増えてきています。
職場内研修は、各現場ごとに行われる研修です。
広義には、講師も外部の人を立てて実施する研修がこれにあたります。狭義では、朝会での簡単な過去の成功・失敗体験の共有などもこれにあたります。
Googleなどが、チームを大事にして結果を出していることもあり、チームビルディングや、転職者のオンボーディング研修なども増えてきています。

期間による切り口
研修は、期間によっても学び方が大きく変わってきます。
最後に、期間による切り口についても紹介していきます。
主に以下の切り口があります。
期間による切り口
- 短期研修
- 飛び石研修
- 長期研修
短期研修は一番オーソドックスな形の研修です。
学ばせたい内容について半日~2日程度を使って一遍に学んでしまう研修となります。
メリットとしては、あまり時間が取られず、かつ新たな知見を入れることができる点です。
しかし、デメリットとしては短期での学びのため、すぐに忘れてしまうといったことが挙げられます。現場で学んだことを活かしたり、学んだことをアウトプットする場を設けていくことが重要です。
飛び石研修は、短期研修にプラスして現場での学びの実践後に、もう一度集まって学びのアウトプットの振り返りまでをひとつのセットにする研修です。
短期研修だとどうしても、個人での意識によって、学びをアウトプットしての定着度合いはバラバラになってしまいます。そこで、一定の期間の後にもう一度集まることを予定しておくことで、普段の意識レベルを上げることが促せます。
研修の費用がかさむことがデメリットですが、しっかりとスキルを定着させることにつながりやすい形になります。
長期研修はあまり会社としては多く実施することはできませんが、どうしても学ばせたい、身につけさせたい学びであれば有効です。
例えば、今までは営業だった人が、技術職になるとしたら、学ばなければならないことは非常に多岐に渡ります。そういった人には、短期研修だけでは現場で活躍することは難しいでしょう。
また、今までと違うマインドセットを会社として求めていきたいときや、意識の抜本的な変革を行っていきたいときにも有効です。
最近では、イノベーション研修や、アジャイル開発研修といったDX領域において、実際に手を動かしてできるようになるまで研修を行うことが増えてきています。
また、企業大学を創設し、職種や階層に関係ないメンバーで1年をかけて様々なことを研究をするといった動きもでてきています。
最後に
このように、社員研修の内容の切り口には様々なものがあります。
自社においての、必要なスキルや、学ばせたいことの重要性や喫緊感、対象者などをもとに内容を考えてみてください。
最後に、研修はあくまでも、インプットがメインになります。
研修の実施においては、研修の成果を決めるのは実は前後が大事だという研究結果があります。
これは、研修の実施前が4割、研修が2割、実施後が4割といわれています。
実施前には研修の重要性や動機付け、実施後には復習と実践、を行うことでより効果があります。
是非とも、研修内容だけでなく、前後の施策も並行して考えてみてくださいね。

この記事を書いた人
栗林 陽
(株)TOASU DI室リーダー/チーフディレクター
大学卒業後、大手IT業界、海外経験を経て現会社へ入社。日本の継続的、健康的な成長を願い、企業向け研修の企画、営業に従事。その後、営業だけでなく0からの研修企画、作成が認められ、社内での新規事業のリーダー職を担う。現在は「チーム」へ向けた今までにないサービスを作成中。座右の銘は「少しでも良い社会のために」。本業の傍ら、地域活性にも参画。大学まで続けたサッカーは今でも毎週行っている。