
目次

企業として収益を安定的に向上させるためには、定期的な業務改善が不可欠です。事業環境は常に変化し続けています。
例えば、顧客のニーズは時代に応じて変化し、サービスが成熟するとコストや品質の要求レベルも高まります。これに応えるためには、競合他社のサービスレベルにも対応する必要があります。また、現状の業務プロセスを維持するだけで満足するのではなく、常に改善し、最新化する努力が求められます。これによって、厳しい市場環境で生き残ることが可能です。
多くの組織では、業務プロセスの改善にPDCAサイクルを活用しています。具体的には、プロセスを可視化し、課題を抽出し、原因を特定し、解決策を見つけるというサイクルを繰り返すことで、継続的な業務改善を行います。
業務の成果や目標達成を最大化するためには、プロセスをマネジメント(管理/効果の最大化)をすることが必要です。プロセスの管理によって、効率化や品質向上、コスト削減などの成果を実現できます。
プロセスマネジメントとは
プロセスマネジメントの必要性
普段の業務において、自分の業務プロセスを明確にしている人はどれほどいるでしょうか。ほとんどのビジネスパーソンは、ITや企画などの部署にいない限り、明確化することが難しいかと思います。もしくは、出来ている”つもり”になってしまっている人も多いかもしれません。
しかし、自身に限らず組織やチームとして、各ビジネスにおけるプロセスを明確にして
修正していくことは、①プロセスの見える化、②ビジネスの再現性、③プロセスのボトルネックやテコを見つけるために非常に有益です。
例えば、①プロセスの見える化では、業務の流れや手順を明確に把握できます。これにより、業務の進行状況や課題を把握しやすくなります。
②のビジネスの再現性では、同じ業務を繰り返し行う場合に重要です。明確なプロセスがあれば、新たなメンバーが加わっても効率的に業務の遂行が行え、品質の一貫性も保つことができます。
さらに、プロセスの明確化は③ボトルネックやテコを見つけるための手掛かりとなり、どのステップで遅延や問題が発生しているのかを把握し、改善策を考えることができます。
以上のような理由から、自分自身や組織、チームとしてプロセスを明確にし、修正していくことは非常に有益です。
プロセスマネジメントのメリット
プロセスが見える化することで、業務のプロセスが誰がみてもわかるようになり、誰が何をする必要があるかがわかり、メンバー間でも連携がとりやすくなるなどのメリットがあります。
プロセスが明確になることで、属人的な業務にならず、ビジネスに再現性が設けられることになります。事業をスケールをさせていくためには再現性のあるプロセスは必須です。
また、プロセスが明確になることで、業務においてそれを止めてしまっているボトルネックを見つけることや、ビジネスが何倍にもつながる可能性があるテコも見つけやすくなります。
プロセスが見えているプロジェクトと、見えていないプロジェクトを想像してみてください。
皆さんはどちらのプロジェクトの方が進めやすいでしょうか?
特にプロジェクトの参加者が多ければ多いほど、答えは自ずとみえてくるのではないでしょうか?
プロセスマネジメントの注意点
プロセスマネジメントを考えていくにあたってもいくつかの注意点があります。
まず、どのような目的でプロセスマネジメントを行うのかを事前に明確にしましょう。例えば、旅行の場合、どの国に何のために行くのかを明確にしなければ、目的もなくただ彷徨ってしまうことが想像できます。特にビジネスにおいては時間も重要な要素ですので、マネージャーは目的や方向性を明確にすることが重要です。
また、新しいことを始める際には、一般の人々は心理的な抵抗を示すことがあります。これは現状維持バイアスとして知られています。そのため、現場の状況を理解し、変化がどのような負担をもたらすのかを常に考える必要があります。特に繁忙期などに変化を導入する場合は、その影響を想像しましょう。
さらに、プロセスマネジメントの成功にはコミュニケーションも欠かせません。これらの考えや情報を適切に伝え、浸透させるためには、効果的なコミュニケーションが必要です。
プロセスマネジメントにおけるコミュニケーションの重要性
どんなことにも言えますが、上司やトップから一方的に業務が与えられるのは、メンバーとしては辛いものです。そのため、なぜそのプロセスが必要なのか、どんな目的があるのか、そしてそのプロセスによって期待される効果などをしっかり伝える必要があります。
さらに、参画意識を高める方法として、プロセスマネジメントの構想段階でメンバーを打ち合わせに参加させることがあります。人は自分が関わっていることに興味を持ちやすい傾向があります。
皆さんも、ただ言われた業務に対して、やる気が出なかった経験はあるのではないでしょうか?
プロセスマネジメント成功のための要素

プロセスマネジメントの成功事例
ここでは、プロセスマネジメントの成功例として、某大手自動車メーカーの事例を紹介します。この企業では、プロセスマネジメントの一つである、TOC(Theory of Constraints)を用いてプロセス改善を試みました。
具体的には、塗装部門において自身のプロセスを可視化し、ボトルネックの特定に取り組みました。その中でも特に、全工程を大幅に停止させている箇所を特定することに焦点を当て、その特定したボトルネックを解消するために、工程自体を大幅に変更するという決断を行いました。結果として、それまで膨大だった残業時間を限りなくゼロに近づけることに成功しました。
この事例において、プロセスマネジメントの効果は大きく、その他にも様々な影響を与えました。
例えば、部門長はプロセスマネジメントのトレーニングを受けた後に陣頭指揮にあたり、部門全体の理解を促進するために課長が関与、各メンバーには意識改革なども同時に進められました。
トヨタ生産方式が世界的に評価された際、多くの企業がトヨタを見学に訪れましたが、本質的な要素を持ち帰ることができなかったという事例はよく知られています。形だけではなく、本質的な理解と現場を巻き込む雰囲気づくりが重要であることは、間違いないと考えられます。
プロセスマネジメントのよくある失敗事例
成功事例とは逆に、よくある失敗事例をいくつか挙げましょう。
まず、よくある失敗例の一つは目的の”非共有”です。前述したように、組織内で何を目指し、どこに向かうのかが共有されていないと、メンバーは細かい判断を行えなくなります。その結果、ビジネスのスピードが低下し、うまくいかない状況に陥る可能性があります。
次に挙げられるのは、コンサルタントに頼りきったプロセスマネジメントです。コンサルタント会社に新しいノウハウや業務改善のアイデアを提供してもらうことは有益なことですが、メンバーが実際に現場で動くことを忘れてはいけません。計画段階で理想論だけにとどまらず、現場の実情を考慮した実行計画を立てる必要があります。理想だけを追い求めても現実には繋がりません。
さらに、メンバーとの計画や実行前後でのコミュニケーション不足も失敗の要因となり得ます。メンバーとのコミュニケーションが不十分なままで計画が進められると、失敗のリスクが高まります。計画段階から実行に至るまで、メンバーとの密なコミュニケーションを保つことが重要です。
これらの失敗事例を避けるためには、目的の共有、現場の実情への配慮、メンバーとのコミュニケーションを重視する必要があります。これによってプロセスマネジメントの成功に近づくことができるでしょう。
事例から学ぶべきポイント
事例から明らかになることは、適切な計画と戦略、コミュニケーション、自己の関与の重要性です。
成功事例では、明確な目標を設定し、それに向けた計画や戦略を立てることが重要であることが分かります。一方、失敗事例では、計画の不備や目標の曖昧さ、リソースの適切な配分の欠如などが原因となります。適切な計画と戦略の立案は、成功への基盤となる重要な要素です。
コミュニケーションにおける成功事例では、チームの協力と効果的なコミュニケーションが鍵となりました。一方、失敗事例では、チーム内のコミュニケーションの不足や意思疎通の不備、個々の役割の明確化の欠如が問題となります。チームワークと効果的なコミュニケーションは、成功への重要な要素です。
さらに、プロセスマネジメントを行う組織やチーム、個人にとって重要なのは、それが自分自身にとっても重要であるという自己関与の必要性です。自己が関与していると思えれば、継続的な改善や効果性の最大化を意識してくれるようになります。マネージャーとしては、メンバーに対してなぜそのプロセスを行うのかを考えさせることが重要です。
以上の要点を押さえながら、プロセスマネジメントを考えることが重要です。
具体的なアクションプランを考える際の注意点
アクションプランを策定する際には、対象となるプロセスを分析し、現状の課題や改善の余地を把握することが重要です。
まず、対象となるプロセスを分析し、現状の課題や改善の余地を把握します。プロセスの全体像を理解し、ボトルネックや効率化のポイントを特定しましょう。
次に、分析結果に基づいて、改善のための具体的なアクションを検討します。改善のポイントに対して適切な対策や改善案を立てましょう。
そして、アクションプランを策定した後も、継続的なモニタリングと評価を行いましょう。定期的に進捗状況や結果を追跡し、目標に向けて適切な方向に進んでいるかを確認することが重要です。
必要に応じてアクションプランを修正や調整し、改善サイクルを継続しましょう。継続的な改善を行うためには、フィードバックを受け入れ、必要な修正を行う柔軟性が求められます。
正しいプロセスマネジメントの手順

①業務プロセスの可視化
対象となる業務プロセスを可視化する必要があります。これはビジネスプロセスモデリングと呼ばれる作業で、業務フローを作成して、計画された業務プロセスを開始から終了まで視覚的にモデル化します。
②可視化の重要性
モデリングの段階で重要なのは、実際の業務担当者の動きがチャート上で可視化されることです。わかりやすい視覚的な表現に落とし込むことで、業務の目的と実践の間のギャップを埋めることができます。また、標準に沿って可視化することも重要であり、関係者全員に正しく意味が伝わり、共通言語のような役割を果たします。
③分析と再設計
モデリングの次の段階として、業務フローを分析し、現状の問題点や課題を抽出します。自社の事業の目標に照らして現状を分析し、時間やコスト、生産性などの指標を用いて目標を設定します。そして、現状と目標を比較・分析し、浮かび上がった問題点や課題を議論し、業務プロセスを再設計します。
④実行とモニタリング
再設計が終わったら、設計したプロセスを実行し、それが狙い通りに運用できるかモニタリングします。大規模な場合や継続的なモニタリングには、ビジネスプロセス・マネジメント・システム(BPMS)と呼ばれるITツールを利用することもできます。モニタリング結果を振り返り、改善活動へのフィードバックも重要です。
以上のプロセスを繰り返し、実行結果と目標の差異を振り返り確認し、問題の原因を分析して改善することで、継続的な業務改善を実現しましょう。
まとめ
プロセスマネジメントは一度だけの取り組みでは意味がありません。重要なのは、業務の可視化から改善策のフィードバックまでを継続的に行う一連のプロセスをサイクル化し、継続的に改善活動を行っていくことです。
継続的な改善活動によって、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを加速させ、スパイラルアップの改善活動が継続されることで、業務の最適化や最大化を実現することができます。
組織のマネジメントに継続的な改善を組み込むことで、業務の効率化や品質向上を実現しましょう。
この記事を書いた人
栗林 陽
(株)TOASU DI室リーダー/チーフディレクター
大学卒業後、大手IT業界、海外経験を経て現会社へ入社。日本の継続的、健康的な成長を願い、企業向け研修の企画、営業に従事。その後、営業だけでなく0からの研修企画、作成が認められ、社内での新規事業のリーダー職を担う。現在は「チーム」へ向けた今までにないサービスを作成中。座右の銘は「少しでも良い社会のために」。本業の傍ら、地域活性にも参画。大学まで続けたサッカーは今でも毎週行っている。