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今日、組織開発におけるマネージャーの役割がとても重要になってきています。成熟した市場では、新たな価値を創造するために「個人の力」を「組織の力」へと変えていく必要があるからです。そのためには、マネージャー職の力量こそが企業の成長を担う大きな鍵となっているのです。そんな重要なマネージャー職の仕事について、紹介いたします。
マネージャーとは

一般的に定義されるマネージャーとは「管理や運営を実施し、目標に向かって進むべき方向性を示し、チームにおける成果を上げることができる者」です。
そのためには、人間関係を良好に保ち、論理的思考を用いて明確な意思決定を行うことが重要であり、マネージャーの仕事は多岐に渡ります。
マネージャーの役割
マネージャーの役割として以下の4つが挙げられます。
1)目標設定
2)現状把握とその分析
3)それに対する課題解決方法
4)適切なフィードバック、評価
です。これは、マネージャーにとって重要な役割と言えます。
目標設定
目標設定とは、企業ミッションの実現に向けた具体的なゴールのことを指します。短期目標、中長期目標があり、それぞれに具体的なアクションプランを構築する上での根拠となるとても重要な指標です。
よって、「8月末までにコストを10%削減する」などといったように具体的に数値化する必要があり、曖昧さを回避します。
現状把握とその分析
起きた事象の因果を調べ、今後の対策を立てるための貴重な情報源となります。
◆どういった事象が起こっているのか
◆その原因は何なのか
◆今後はどのように対応するのか
がポイントとなります。そして、それらには再現性があるのか否かを見出すことがとても大切だと言えます。
それに対する課題解決方法
課題解決を実施する主なアプローチとしては
◆原因を取り除く
◆新しい取り組みを創る
があげられます。その際、5W1Hのフレームワークを活用したり、トヨタ生産方式の一環である「なぜなぜ分析」などを活用しても良いでしょう。
適切なフィードバック、評価
スタッフへフィードバックを行い、何が良かったのか、あるいは何が良くなかったのかをタイムリーに伝えることは、マネージャーの大切な仕事の一つです。客観的に課題点を伝える、納得感が得られるように誠実に対応することが大切です。
また、フィードバックという過去のことに目を向けるだけでなく、未来へと前を向いていくことができるようにフィードフォワードを実施することをおすすめします。
以上のように、チームを成功へと導くためにマネージャーの役割を忘れてはいけません。
マネージャーの責任

マネージャーには、一般職とは違いとても大きな職責が発生します。それらは以下の7つに集約することができると言えます。
1)業績の責任
2)業務改善の責任
3)部下育成の責任
4)報告の責任
5)業務遂行の責任
6)経営価値共有の責任
7)法令等遵守の責任
以上について、順に説明をしていきたいと思います。
業績の責任
営業成績やコスト管理等において、マネージャーには業績の責任が発生します。業績を上げるためにはどうすれば良いのか、現在の業績を担保するためにはどのようなアクションが必要なのかを常に考え、スタッフへと落とし込むことがとても大切です。
業務改善の責任
今のやり方が正しいのかを常に検討し、さらに生産性を向上させる取り組みがないかを探します。そして、P D C Aサイクルを高速で回す必要があります。なぜ失敗したのか、なぜ成功したのかを常に考え、もっと良い方法や手段がないかという視点を持ち続けることが大切です。過去の成功が未来の成功と直結している保証はどこにもありません。そのため、マネージャーには業務改善の責任があるのです。
部下育成の責任
これはマネージャー職の腕の見せ所と言えます。マネージャー職は、己個人の能力向上だけでなく、チームを成功へと導く責任があります。そのため、部下育成の責任からは逃れられません。自分でやってしまった方が早い場面もあることでしょう。しかし、部下育成の視点を持ち続けることは、中長期的な人材育成に大きく寄与することを忘れてはいけません。
報告の責任
マネージャー職は、中間管理職でもあるために上司と部下という存在に挟まれています。そのために、組織における上下関係の縦軸だけでなく横軸へのコミュニケーションが欠かせません。そのために、報告ベースを軸にしたコミュニケーションがとても大切です。
また、社内においてネガティブなことほど迅速に報告することが重要です。クレームや事故が起こった際に、隠蔽などが行われないように日々日頃からのコミュニケーションを充実させておく必要があります。
ビジネス用語でよく耳にする「報・連・相」という言葉がありますが、連絡・相談は流動的です。一方、報告だけは「いつ、どの場面でどうなったら報告するのか」という点を社内システムとしてルール化しておくことができます。それほどまでに、報告の責任というものが重要なのです。
業務遂行の責任
重要会議等で決まった業務命令が、いつの間にか何らかの事情によって遂行されていないケースというのは会社存続の危機に直結します。個人やチームの「やりたいこと」と「やなねばならないこと」を明確に区別し、やり遂げる力を育むこともマネージャー職に課せられた大切な責任です。
マニュアル通りの言動がなされているか、デッドラインは守られた納期となっているかなど、こまめな進捗管理がとても大切です。
経営価値共有の責任
経営価値とは、企業の存在意義である「ミッション・ビジョン・バリュー」にあたるところです。
この経営価値を全職員に浸透されるために、マネージャーは日々日頃からこの経営価値に基づいたコミュニケーションをチーム内で育む必要があります。
経営価値から外れるスタッフを厳しく指導し、また経営価値に基づいた言動が取れるスタッフを正しく評価する必要があります。
企業が存在する意義を、今一度見つめ直してみてください。
法令等遵守の責任
法令等遵守とは、コンプライアンスとも言い換えることができます。企業には、顧客だけでなく社会全体との約束事があります。
例えば、利益を上げるために環境破壊などもってのほかです。それこそが法令等遵守なのです。企業に対する信頼を寄せているからこそ、顧客は私たちのサービスを購入し、利用します。それらを裏切る行為は決して許されるものではありません。
また、近年では法令を守るだけがコンプライアンスと呼ばれるものではなく、企業の道徳観や倫理観も問われるようになっているため、社会の模範となる言動が欠かせません。
マネージャーの課題
そんなマネージャーだからこそ、多くの課題を抱える場面があります。
◆部下に仕事を任せられない
◆部下の育成ができない
◆上司と部下の板挟みになり、判断に困る
◆多忙すぎる
◆組織間コミュニケーションがうまくいかない
など、挙げ出したらキリがないほどに、マネージャー職は非常に難しい役職であるとも言えます。
この問題を解決するためにも、マネジメント能力を向上させることが急務と言えます。
マネージャーに向いている人の特徴

マネージャーという役職には、多大なる重圧がのしかかってくることでしょう。しかしながら、どの組織においてもマネージャーの存在や力量によって成果が変わってくるために、とてもやりがいのある役職と言えます。
そんな中、マネージャーに向いている人の特徴として、唯一挙げられるには「誠実性」だと考えます。
時に、厳しく上司からも叱責され、さらには部下の不平不満を受け止める器の広さも求められます。その際、孤独を感じて逃げ出したくなることもあるでしょう。しかし、マネージャーという役職をまっとうするためには、誠実性がなければなりません。
その際、ただ単に、部下に対してアドバイスをするだけでもいけません。
悲しい気持ちの人には、共感をする。
落ち込んでいる人には、肯定をする。
努力している人には、労いの言葉をかける。
悩んでいる人には、傾聴をする。
困っている人には、共に戦略を考える。
このように、相手がどういう状況の置かれているのかを瞬時に見抜き、それに対する言動をとる必要があります。
特に、1on1を実施し、部下の本音を引き出したい瞬間があると思います。その際、部下から信頼されているマネージャーであるか否かはとても大きな問題です。ぜひ、誠実性を持って、部下一人ひとりと向き合っていってください。
さいごに
マネージャーとは、とても重要な役職であると同時にたくさんの負荷がかかる場面が多いのもまた事実です。だからこそ、部下だけに対してマネジメントを行うのではなく、自分自身をしっかりとマネジメントしていくことがとても大切です。
心身の健康を保ち、素晴らしい仲間と共に社会課題に対して立ち向かっていってください。マネージャーとは、仕事を通じて人生の喜びを経験することができる素晴らしい仕事です。
この記事を書いた人
外川 大由(Hiroyoshi Togawa)
大手経営コンサルティング会社を経て、オランダにてコンサルティング会社を設立。
東京大学大学院工学系、帝京大学冲永総合研究所での研究員のキャリアを持ち、医療コミュニケーションの研究を専門的に行う。
「人の才能が開花する瞬間に立ち会う」をミッションに掲げ、医療機関のコンサルティング・研修は年間250回を超える。
著書ラストピースマネジメント(介護業界初のマネジメント小説本)は、Amazonランキングで二部門1位を獲得。