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マネジメントとは何か

マネジメントとは何か
ビジネスパーソンであるならば必ずと言っていいほど耳にする言葉の一つに、「マネジメント」があります。
そもそものマネジメントの語源は、イタリア語で「馬を調教する」という意味が「馬を馴らす」へと意味が転じて、いつしか「物事をうまく取り扱うこと」と意味するようになりました。
そのマネジメントとは、「企業がミッションに対して様々なリソースを活用し、成果をあげるために取り組む目的達成のための最も重要な能力」と定義することができます。
辞書等による出典元によっては多少の表現に違いはあるとしても、伝えたい本質的なことは「組織がさまざまなリソースと手段を用いて、成果を上げること」と要約することができます。
マネージャーとは
マネージャーとは、「マネジメント能力を活かし、チームメンバーに対して目標やそれに対するアクションを明確化することで成果へと導くことができる人物」と定義することができます。
己の能力開発だけを目指すのではなく、「チームの成果」を何よりも重要視することができる人ほど、優秀なマネージャーと言えます。
マネジメントを行う3つの役割

かの有名なピーター・ドラッガー氏は、マネジメントの役割を以下の3つに集約しました。
①自らの組織に特有の目的を果たす
➁仕事を通じて働く人を生かす
③自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する
出典元:P.F.ドラッガー マネジメント[エッセンシャル]-基本と原則
端的に要約すると、マネジメントにおける役割は
①企業の目標達成
➁個人の成長
③社会貢献
と言い換えることができます。
企業の目標達成
目指すべき目標や目的を明確にし、それに向けて早期に成果を上げるためには、マネジメントを実施することがとても大切です。チームが成果を上げ、企業の目標達成のためには、マネジメントを行うことが必須条件と言えます。
個人の成長
マネジメントを実施することは、個人の成長に直結します。なぜなら、チームで目標を達成するためには、「個人の力」が集結し「チームの力」へとなっていくからです。難しいレベルの高い目標を目指すのであれば、今以上に「個人の力」を成長させることが不可欠です。
社会貢献
企業の存在価値として、「社会貢献」は抽象度の高い非常に重要な視点です。企業利益ばかりを目指すあまりに社会問題を引き起こすようでは、とてもマネジメント能力が高い事業だとはいうことができません。社会が抱える課題を解決するために私たちの企業が存在していることを忘れてはいけません。
このように、マネジメントを行う目的を明確にすることこそが、マネジメントの第一歩と言えます。
マネジメントにおける重要な力
マネジメント能力が高いと定義できる根拠の一つとして、アセスメント能力が高いことが挙げられます。
このアセスメント能力とは、スタッフ個人やクライアント・顧客の根本課題を見つけるための手段であり、評価や査定を意味します。つまり、問題が起こっている原因を見つけるための問題発見能力に直結する力と言えます。
アセスメントを行う力が発揮されることで、ようやく課題解決に向けた対策のための「計画」ができ、新規プロジェクでも大切な「企画力」が培われます。
計画力・企画力が育まれることができれば、実行力が発揮されます。実行力があれば、継続力が生まれます。
こうして、P D C Aを高速で回すことができるのです。 つまり、マネジメントの根源となる最も重要な力の一つとして「アセスメント力」があり、アセスメント力を身につけることがマネジメントにおいて欠かせない能力と言えます。
マネジメントは点ではなく、線

マネジメントは、点ではなく線を意識することがとても大切です。
例えば、企業として「育成」がうまくいかないと、つい「育成だけ」を課題だと考え、それに対するアクションをとってしまいます。それはあまりにも近視眼的でアセスメント不足と言わざるを得ません。
果たして、「育成だけ」が問題でスタッフは成長することができていないのでしょうか。
「研修内容はマッチしているのか」
「評価基準と整合性は取れているのか」
「そもそも企業理念にマッチした人材を採用できているのか」
などと深掘りし、仮説を立てることができます。
つまり、マネジメントを点で考えてしまうが故に、間違ったアプローチをしてしまうケースは決して珍しくありません。
そのために、マネジメントを行う際には、以下の5つが線で繋がっていることがとても大切です。
①人材採用
➁人材育成
③人事評価
④組織風土の構築
⑤職場環境の変革
この5つが線となることで、一貫した整合性のあるマネジメントを実施することができます。
組織の成熟度を見極める

マネジメントで大切な価値観の一つとして、チームにはチームが進化するステージに合わせたマネジメントを実施する必要があります。弊社では、タックマンモデルを採用し、会社の規模感や成熟度に合わせたマネジメントモデルを実施しています。
①形成期
➁混乱期
③統一期
④機能期
⑤散会期
があり、特に、混乱期から統一期へと成長するためには、マネジメント能力があるか否かがとても重要な鍵となり、マネージャーの力量が試される瞬間でもあります。
混乱期では、個々の仕事の進め方や価値観に違いが生まれ、ミスコミュニケーションが生まれやすくなります。その際、マネージャーが中心となって、チーム内に納得性を持たせることが重要なテーマとなります。スタッフ間の対立や不納得感があるままプロジェクトが進めば、結末がどうなるかは安易に想像がつきます。
この混乱期を乗り越えられるか否かは、マネジメント能力によって大きく左右されます。
業務別マネジメント

業務別マネジメントは、主に「組織運営」「人材管理」「メンタルヘルスマネジメントの3つの範囲別に分けられます。ここでは、それぞれの業務マネジメント方法についてみていきましょう。
組織運営
①チームマネジメント
チームマネジメントの目的は、チームメンバーの育成により、生産性を向上させることにあります。特に、リーダーであるマネージャーが率先垂範し、チームを成功へと導く力が求められます。
チームマネジメントでは業績責任だけでなく、
◇業務改善の責任
◇部下育成の責任
◇報告の責任
◇業務遂行の責任
◇経営価値共有の責任
◇法令等遵守の責任
があると言えます。
②プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントの目的は、計画立案から進捗管理、定量評価まで一貫したプロジェクトの管理を行うことにあります。
プロジェクトマネジメントと一概に言っても、そのバリエーションは非常に幅広く、
◇統合マネジメント:立ち上げ、計画、実行、管理監督、終結の一連の流れのこと
◇スコープマネジメント:プロジェクト、フェーズにおける作業範囲、成果物のこと
◇スケジュールマネジメント:納期管理のこと(タイムマネジメントにも当たる)
◇コストマネジメント:承認を受けた財産や予算を運用すること
◇品質マネジメント:成果物や品質のこと
◇資源マネジメント:人的・物的資源のこと
◇コミュニケーションマネジメント:会議予定、コミュニケーションの内容や頻度、方法の適正化のこと
◇リスクマネジメント:リスク特定、分析対応方法、対策の実行のこと
◇調達マネジメント:外部からのサービス製品等の調達のこと
◇ステークホルダーマネジメント:ステークホルダーの定義、関与度のこと
などが挙げられます。
③ナレッジマネジメント
ナレッジマネジメントは、情報やスキル、ノウハウを組織全体で共有し、自社リソース化することを目的としています。個人が得ている顧客情報やノウハウを、チーム全体で共有することで、再現性を担保したサービス展開が可能になります。
◇情報を業務横断できずに参照できない
◇有用な情報を探すのに手間がかかる
◇他の業務結果からフィードバックを得られない
などの課題を解決させることができるのが、このナレッジマネジメントの力です。
人材管理
①タレントマネジメント
タレントマネジメントとは、能力やスキルに合った人材の適正配置や育成を目的としたマネジメントです。
採用後に、どの部署に配置しどんなチームの中で個人の能力を発揮するかは、このタレントマネジメントがとても重要になってきます。
②モチベーションマネジメント
モチベーションマネジメントとは、スタッフへの動機づけでモチベーションを向上させることを目的としています。高い意欲を持って仕事に取り組み、成果へと直結するアクションが取れるようにサポートするマネジメントのことです。
③パフォーマンスマネジメント
パフォーマンスマネジメントとは、目標達成のために適切なフィードバックと評価を実施することを目的としています。
個人のモチベーションを向上させることで、チームとしてのパフォーマンスを最大化することがとても大切です。パフォーマンスマネジメントが実施されている組織風土の特徴として、スタッフエンゲージメントが高く、スタッフ一人ひとりが充実したビジネスライフを送ることができています。
メンタルヘルスマネジメント
①メンタルヘルスマネジメント
メンタルヘルスマネジメントとは、スタッフのメンタル面への配慮を心がけ、セルフケアへ働きかけて、スタッフのメンタルに不調をきたすことのない環境を構築することを目的としています。
最近だと、心理的安全性という言葉が使われるようになりましたが、まさにスタッフにとってメンタルヘルスマネジメントは企業が取り組むとても重要度の高いマネジメントの一つと言えます。
②ストレスマネジメント
ストレスマネジメントは、ストレスをコントロールし、スタッフの健康を維持向上させることを目的としています。
ストレスを完全に無くすことは不可能であるが故に、ストレスとの上手な付き合い方を学び、適切な対処法を実施していくことがとても大切です。そのためには、自分自身のことを知るために、自己理解が第一歩目と言えるでしょう。
③アンガーマネジメント
アンガーマネジメントとは、その名の通り怒りの感情をコントロールするためのマネジメントです。アンガーマネジメントというと、「怒らない」ことを目指していると誤解されることが少なくありません。決して怒らないことを目指すものではなく、上手に怒れるようになったり、不必要に怒ることがないようにメンタルをコントロールする力を指します。
今日はストレス社会と言われるように、ストレスを避けていくだけでなく、ストレスといかに向き合い、それらをコントロールしていく力を育むことに注力することがとても大切です。
さいごに
以上のように、「マネジメント」とは一言では伝えられないほどに幅広く、深いものです。マネジメントを理解することで、ビジネス成功はもちろん、仲間と共に成長することができます。世に素晴らしいサービスを展開するためには、マネジメント能力を鍛えていくことが最も大切です。ぜひ、マネジメントを通じて、チームの成功だけでなく、個人の成長へと繋げていってください。
この記事を書いた人
外川 大由(Hiroyoshi Togawa)
大手経営コンサルティング会社を経て、オランダにてコンサルティング会社を設立。
東京大学大学院工学系、帝京大学冲永総合研究所での研究員のキャリアを持ち、医療コミュニケーションの研究を専門的に行う。
「人の才能が開花する瞬間に立ち会う」をミッションに掲げ、医療機関のコンサルティング・研修は年間250回を超える。
著書ラストピースマネジメント(介護業界初のマネジメント小説本)は、Amazonランキングで二部門1位を獲得。