
目次
メンターとは
一般的にメンタリングを受ける者(メンティー)に対して、サポート・アドバイスをする存在のことを言います。
元来メンターとは、メンティー自身が信頼し、公私にわたってなんでも話せる相手に対して思うことであり自称することではありません。
昨今では制度として取り入れる企業が増加し、メンターを自称してメンティーに接する難しさを感じている方も多いでしょう。
企業内では、新入社員をメンティーとして近い存在(年齢など)の社員が選ばれることが一般的で、近い存在だからこそ同じ目線に立って話ができ、メンティーを支えることでメンター自身の成長も期待されています。

メンターって何するの?
入社3年〜5年目の社員が突然メンターに指名されると言うことも多く聞かれ、実際に何をすれば良いのかわからないまま実務に入っている人も少なくありません。
基本的な役割を整理していきましょう。
良き理解者・相談者となる
メンティーとの関係性は上下関係ではなく、先輩として仕事のやり方を教えるという立ち位置とも違います。メンティーの仕事の悩みはもちろん、プライベートのことも話すことができる良好な関係性を築くことが大切です。
傾聴する
まずメンティーの悩みや思いをしっかりと聞く姿勢が求められます。
何が原因なのか、どんな問題に当たっているのかを理解するには、情報を引き出すことが必要です。
自己解決の道を探る
問題の内容にもよりますが、実務的な悩みであれば解決方法を教えてあげられるケースも少なくないでしょう。そういった場合に、簡単に解決方法を教えるのではなく、自己解決できる力を養うために、ヒントを伝えながら一緒に解決方法を探っていくことは有効です。
関与しすぎずアドバイスを送る
メンティーの取り組みに手を出しすぎずにサポートすることで成長を促します。
一緒に考えた方法を実践するのは本人に任せて、困ったり壁にぶつかったときは適宜アドバイスを送ってあげましょう。

メンター制度を導入するメリット
メンティーの働く環境向上
多くのメンターが新入社員であり、仕事の悩みや人間関係、環境が変わったことによりプライベートも不安定になることもあるでしょう。
そんな時に1人で抱え込んでしまうと離職につながってしまうリスクもありますが、社内に信頼できる人がいることは精神的な支えになると思います。
メンター自身の成長
自分とは違う考えを聞いたり、メンティーに見られている環境で働くことで責任感を持って仕事に取り組めるケースが多いと言われています。育てようという心が自身の成長にも寄与してくれるでしょう。
社内のコミュニケーション円滑化
信頼できる人が社内にいることでコミュニケーションの面で安心材料になり、細かなことも話し合える環境が生まれます。
そしてメンティーだった人がメンターになり、また次の人へとつながってくことでコミュニケーションが連鎖して風通しの良い職場になっていくでしょう。
部署を超えた一体感
他部署の社員をメンターとして選ぶところもあり、人間関係の悩み等はこの方が話しやすい場合もあるでしょう。
結果的に部署を超えた付き合いが生まれ、一体感のある会社作りに寄与してくれることになります。
メンター制度の効果
メンター制度を取り入れることで様々なメリットが考えられますが、実際にはどういった効果があるのでしょうか。
厚生労働省が行ったメンター制度を取り入れている企業へのアンケート調査から、その実態を垣間見ることができます。
メンターの人材育成意識向上とメンティのモチベーション向上が最も実感されている効果となっており、こちらは双方に良い効果が出ているケースと言えるでしょう。
その他にも、メンティの知識・スキル向上や定着率向上など、メンターのサポートが功を奏しているケースが報告されています。
このアンケート調査では少数意見ではありますが、メンターの効果を特に感じないという意見も出ており、デメリットを感じているケースもあるかもしれません。
プラスな影響ばかりでなく、マイナス面も考慮した上で導入すると良いかもしれません。

厚生労働省「ロールモデルの育成およびメンター制度の導入に関するアンケート調査」(平成24年11月)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000106269.pdf
メンター制度を導入するデメリット
相性が良くない
合う・合わないについては、事前にわかるものではないでしょう。
相性が良くないペアになってしまうと、どちらにとっても良い効果は生まれにくいと言わざるを得ません。こういった場合には、いち早く気付いて対処をすることが良いと思います。
メンターの仕事量が増える
具体的に週何回メンタリングをするなど決まっているケースは少なく、見守りながらアドナイスをすることになっていますが、育成計画を作成したり、しっかりサポートをしようと思うと手間はかかるものです。
元々の仕事にプラスして行う場合がほとんどなので、メンター側のケアも忘れてはいけません。
比較対象が多く不満が出やすい
メンティーが同期との比較がしやすく、対応の差に不満を漏らすことは多く聞かれるところです。力を入れてくれるメンターとそうでない場合も当然あるので、こういった場合には逆効果を感じる人もいます。

メンターとしての注意点
メンターを務めるために資格やスキルなど必要となるものはありませんが、だからこそ不安も大きいと思います。
1対1の対話などコミュニケーションを取るための技術やメンターとしての心構えなど、実際に知っておいた方が良いことは多くあるので研修の需要も増えていくでしょう。
コーチングとの違い
精神的なサポートの意味合いが強いメンターに対して、目標に向かって指導し進んでいく意味合いが強いのがコーチングです。
目標に向かって進んでいくメンタリングをすることもあるかもしれませんが、基本姿勢としてサポート役であり、良き相談役としての役割を忘れないためにはこの違いを理解しておく必要があるでしょう。
コーチングについては、別記事「コーチングのやり方 これだけは抑えておきたい情報」をご覧ください。
上下関係を作らない
フラットな立ち位置で話をすることを意識し、説教や命令などはしないように気をつけると、良好な関係性を作りやすいでしょう。
アウトプットの速さには個人差がある
メンティーの言葉と行動が合わないことは多々起きると思います。1回でアウトプットできる人もいれば、なかなか難しいという人もいるかもしれません。
根気強いサポートが必要なケースもあります。
勝手に他言しない
当たり前かもしれませんが、信頼して話してくれた内容を勝手に他言することは望ましくありません。メンティーに漏れ伝わってしまったら、関係性が破綻してしまう恐れもあります。最も大切な信頼関係を崩さないように心がけておきましょう。

まとめ
自分のことで精一杯の人もいる中、他人のこととなるとより大変なことは想像に難くありませんよね。
いざやる気で取り組んでも相性が悪かったり、難しい局面が待っているかもしれません。
ただ、メンターとして上司が選んだということは、適性があると思ってくれているとも言えます。
将来管理職になっていくために良い経験になることも踏まえ、もし選ばれた場合は全力で取り組んでもらえたらと思います。