COLUMN
研修コラム
避けては通れない生成AIの影響
世界的に急速な普及が進む生成AI。OpenAI社のChatGPT、Microsoft社のCopilot、Google社のGeminiやGemma、Anthropic社のClaudeなど、各社の開発と発展も目覚ましく、大きな経済効果が生まれています。
直感的に使いやすく、多くのツールがインターネット上で広く公開されている生成AIは、ビジネスの現場でも活用が始まっています。一方で「まだ使ったことがない」もしくは「プライベートではあるけど、業務ではまだ活用していない」というビジネスパーソンも多いようです。
しかし、生成AIの開発とそれに伴う市場規模は今後も大きく成長すると予測されており、どの業界であっても影響を避けて通ることはできないでしょう。それどころか、生成AIによる生産性・業務効率の向上からビジネスの進行も加速するため、そのままではスピードに置いていかれてしまう可能性があります。
ビジネスでの利用は約半数

スキルアップ研究所の調査によると、業務において生成AIを「まったく活用していない」と回答したビジネスパーソンは44%と半数近く。まだビジネスの現場での活用率は低いことがうかがえます。
世界的に見ても低い日本の活用率

総務省の調査でも、業務における生成AIの活用状況(メールや議事録、資料作成等の補助)において「使用を検討中」「検討もしていない」、つまり現在は活用していないと回答した日本企業は合計で30%を超えました。これは各国企業の平均と比較してかなり大きな割合となっています。
生成AI活用のハードルとは

では、業務で生成AIを活用することの、どこにハードルがあるのでしょうか。
業務において生成AIをあまりもしくは全く活用していない人を対象にその理由を尋ねたところ、「必要だと思っているものの、使い始め方が分からない」と回答した人が33.2%、「必要だと思い始めたものの、十分に活用できない」と回答した人が13.5%でした。
意欲があるにもかかわらず活用の「きっかけ」がないために使い始めるタイミングを見失っている、もしくは「方法」がわからず挫折している。この層が4割以上を占めているのは、生成AIのビジネス活用における大きな機会損失といえます。
半数以上が学んだ経験なし

この状況の背景には「学ぶ環境の少なさ」があると考えられます。
業務における生成AIを活用するための学習機会について、実に54.8%と半数以上が「学んでいない」と回答しました。
また、学んでいる人のうち手段として最も回答が多かったのは「実践を通して独学で学んでいる」(18.0%)であり、体系的な学びを踏まえた活用ができている人が少ないことが表れています。
「学び方がわからない」から学べない

生成AIは急速に発展した技術であることもあり、体系的に学べる学習ツールや講習などが追いついていない状況です。学んでいない、もしくは実際の活用を通して学習・模索していく人は多いのはそのためでしょう。
学んでいない理由を深堀りすると、最も多かったのが「学び方がわからない」(34.6%)。こちらもそんな状況の裏付けと言えます。
ビジネスで使うなら正確に学ぶ機会を
生成AIを活用する「きっかけ」と「方法」を作るには、ともに生成AIに対する理解度を高めることが重要です。
自身の業務で活用される様子を想像できず使う機会を逃している。リスクの範囲が把握できないために正式な業務には組み込めない。上手く使いこなせないまま諦めてしまった。こういった状況は生成AIについてきちんと学ぶ機会がなく知識が足りないからこそ起こっています。
またビジネスの現場において曖昧な知識のまま利用することは、当然のことながら大きなリスクとなりえます。今後活用を目指すならば、具体性をもって正確に学ぶことを目指すべきです。
例えばMicrosoftは「AI Skills Navigator」を、GoogleはGoogle Cloud内にトレーニングをそれぞれ用意するなど、生成AIを開発する企業による学びのフォローアップの体制が整い始めています。インターネットを通じて自身の隙間時間に学ぶことができる、信頼性と手軽さを兼ね備えた学習の手段といえます。
最近では、生成AIを取り扱った研修や講座も増えてきました。先述した2件の例はともにeラーニングシステムですが、研修や講座のメリットはやはり講師や他受講者とコミュニケーションを取れること。課題に対する意見交換や、グループワークを通じた多様な視点の共有、疑問への即時回答などから、実践的なスキルを一気に身につけることができます。
まとめ
日本でも経済産業省やデジタル庁を中心に、デジタル人材の育成・確保を進めています。企業がDXを推進するには、単にツールを導入するだけでなく、それを活用できる人材がいることが不可欠だからです。
DXの波に乗り遅れないためにも、生成AIの正しい学習機会と実践の場を設け、新たなビジネスチャンスの創出に繋げていきましょう。
参照:
スキルアップ研究所「仕事におけるAIの活用に関する実態調査」https://reskill.gakken.jp/4693
総務省「令和6年版情報通信白書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd151120.html