COLUMN
研修コラム
1.TOASU独自の異業種人材開発交流会「異人開」とは
DX、リスキリング、DEI、人的資本経営、サスティナブルなど、人材育成においては、時代の変化とともに、多岐にわたるキーワードが飛び交うようになりました。いつの時代も、人材育成には課題がついて回るものではないでしょうか。
TOASUは、2012年に「異人開」と称し、人材育成における様々なテーマについて意見交換をする、異業種交流会を設立しました。会員制で、TOASUが事務局を務め、官庁・IT・製造業・金融業・サービス業などの約20社にご参加いただいています。会員企業様は、TOASUの研修サービスを導入いただいている企業様です。互いの業界の今後の在り方を人材育成の観点から考える場とすること、意見交換を大事にし、情報を「収集」するのではなく「交換」し、新しい視点を得ることを目的とした会です。ギブアンドテイクであること、自らが意見を発することを参加の前提条件とし、毎回、活発な意見交換がされています。自社の取り組みに、様々な視点からのフィードバックを得られる、様々な視点から人材育成を俯瞰できる点で、設立から12年間、多くの企業様にご賛同いただいています。
2.メンバー企業様の声
メンバー企業様の一人であり、ITスキル研究フォーラムの理事を務める、日立建機株式会社人財本部人財開発統括部主席主管の石川拓夫様が、ITスキル研究フォーラムサイト内に、TOASUの異人開についてコラムを執筆してくださいました。
実際に参加されている方の貴重な生の声を、ぜひ、ご一読ください。
コラム全文
異人開
先日、「異人開」という異業種交流会に参加した。約10年前から同志で始めた人事・人財開発責任者の勉強会だ。学研グループの教育ベンダーである株式会社TOASUに事務局をお願いしているが、基本、参加企業による手作りの会だ。コロナ禍の期間にはオンラインでしか開催できなくて低調になっていたが、今年からリニューアルして、リアルに集まって開催するようになった。現在、官庁・IT・製造業・金融業・サービス業などの約20社が参加している。
運営方法としては、持ち回り幹事で会場を提供し、3社が人事・人財開発の自社の取り組みを紹介し、会員から意見やアドバイスを求める。要はレビューをしてもらうわけだが、同じ分野に従事するいわば同志なので、多くの意見やアドバイスがもらえる。なかなか他社の人にレビューしてもらう機会などないので、とても新鮮で気付きも多く、大変盛況かつ好評である。その名の通りもともと人財開発分野の勉強会から始まった会だが、今では時代の複雑さを反映し、取り上げるテーマは人事分野全体に広がっている。
最近では「デジタル人財育成施策」や「リテンション策」、「シニア社員のモチベーション向上策」などが挙がった。人事・人財開発分野で公開できる範囲のものであればなんでも対象にする勢いである。一人でもやもやしているテーマがあれば手を挙げて発表者になってレビューを受けることができる。だから懇親会で次会の発表者はすぐ決まるぐらい手が挙がる。
各社の発表を聞いていると、同じテーマでも視座や目的などが異なり、大変興味深い。
「こうくるか!」と感心することもあれば、「そこはまずいな」と自分のかつての失敗を思い出し、指摘することもある。お互いが学び合うコミュニティだ。
会のルールは一つだけ。それはWinWinであることだ。お互いが信頼し合い学び合う関係でなければ、サスティナブルにはならない。中には一生懸命に記録をとるだけの人もいるが、大事なのは学び合ってお互いの知見を広げることだ。他社事例を上司にレポートすることではない。活発な意見交換こそが、磨き合うことになる。このような勉強会に参加する際には、メリットが何倍にもなるから、ぜひ意見をしてほしい。
実はこの種の勉強会は、この異業種交流会が最初ではない。これに先立つこと10数年前、最初に立ち上げたのがITベンダーの人財開発責任者の勉強会だ。(2000年発足)この勉強会は今でも続いていて、経済産業省や情報処理推進機構(IPA)も意識する勉強会になっている。同じ業界で同じ課題を有する責任者が真剣に意見交換して自社の政策にその知見を反映した。当時はちょうどITSS発表期とも重なり、ITエンジニアの育成に関して、とてもホットな時代だった。個人的にもこの勉強会では大変救われた思いでいる。ちょうど合併で上京して右も左も分からない時期だったので、他社の人と同じテーマで議論することがとても刺激的で有意義だった。ITSSを活用した取り組みを社内でチャレンジしては、その取り組み事例を他社の人にレビューしてもらい、また施策のブラッシュアップにつなげた。自社の中ではできないことで、自分の成長の礎になったと確信している。同志もたくさんできた。この方たちとは今でも交流し、勉強させていただいている。私の社会人としての大きな財産の一つといえる。
思い起こせば、私は設立時の小さな会社(日立西部ソフトウエア株式会社、現株式会社日立ソリューションズ)の人事からキャリアをスタートした。人事担当としては1/1で、すべて自分で学んで、自分で実施しなくては回らない環境だった。「とはいえ日立グループでしょう」と言われるが、関西の離れ小島にあるような会社で、事業環境も異なるので、教えを乞う人もいない。だから必然だがそれを社外に求めた。自分で選んで社外セミナーや研修も受講した。時には新しいテーマに触れた時に、内容が知りたくてその先駆的な取り組みの会社の人事に直接電話して教えを乞うたこともある。先方は面識もない若者からの申し出に面食らったことだろうが、後日快く面会に応じてくれた。先日その会社の幹部の方と一緒に講演する機会があって、そのエピソードを話すと驚いておられた。社外の人に教えを乞う経験は私のキャリア形成の原点の一つでもあると思っている。
さて「井の中の蛙大海を知らず」という言葉がある。限られた世界や知識にとらわれて、視野が狭いことをさす言葉だ。有名な格言なので、知らない人はいないと思うが、実際自分の身に当てはめてみると、自分がそうなっているかどうか、あるいはそもそも自分が井の中にいるかどうかも自覚することが難しいのかもしれない。企業の中にいると、時々「今そうではないのか?」と感じることがある。自分たちで考えて取り組むことは決して無駄ではないが、まずは先駆的な取り組みがないか、あればどんな取り組みか、どんな苦労や失敗、効果があったかなどの情報を集めてから、どのような取り組みが自分たちに適切なのか考える方が、時間や最適化の観点からとても大切だと思う。試行錯誤には学ぶもことも多いが、先駆的な会社が犯した間違いを自らが経験しないと理解できないのは、今の時代ではやはり無駄のような気がする。特に変化の激しい分野の取り組みは、スピードが勝負だと思う。どこかに同じ課題をもって、同じように動いている人がいるかもしれない。そんな同志と巡り合い、学び合えれば、より適切な施策を実施できるし、自分のキャリアも豊かにすることができると思う。
変化の激しい時代だからこそ、企業の垣根を越えて、学び合うことが必要ではないかと思う。もちろん守秘義務を遵守しながらはいうまでもないが、異なる世界観や組織風土から生まれる多彩な取り組みや、やりたいけどリスクがあってなかなか施策化できない先進的でチャレンジングな取り組みには学ぶことは多く、また一歩を踏み出し自分を成長させる勇気を与えてくれる。ぜひ人事・人財開発分野でキャリアを積みたいと思う方は、今からでも社外の勉強会に参加した方がよいと思う。
ITスキル研究フォーラムサイト コラム
https://www.isrf.jp/home/column/relay/174_20240920.asp