COLUMN

研修コラム

2025.3.27

受験者の半数以上は非IT企業勤務! 「ITパスポート」がデジタル人材へ進化するための鍵になる

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 「ITパスポート」という試験をご存知でしょうか。
 ITパスポートは「情報処理の促進に関する法律」に基づき2009年に開始された国家試験です。情報処理技術者試験の一試験区分であり、その中でも共通的知識の習得として位置づけられています。
 試験項目はAIやビッグデータなどを始めとした新しい技術や手法の概要、経営全般、IT、プロジェクトマネジメントなど幅広い分野に及びます。

 名前や試験項目から非IT業界には関係ない資格と思われがちですが、実は違います。受験者の8割弱が社会人、さらにそのうち非IT系企業に勤める人は8割以上。非IT系勤務の社会人が受験者の半数以上を占めているのです。

ITパスポートが注目される理由

 ITパスポートは「ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべきITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験」、つまり業種・職種を問わない門戸の広い試験として設定されています。

 その背景の一部には、経済産業省などが進める「デジタル人材」育成の課題があります。
 データ活用やデジタル技術の進化による産業構造の変化に適応するためのDX実現が求められる一方で、日本企業は取り組みに遅れがあるとされます。
 その要因のひとつがDXの素養・専門性を持った人材の不足であり、企業のDX実現のためには従業員一人ひとりをDXに理解・関心をもって自分事として捉える人材に育てること、より専門性をもって具体的に推進・活躍する「デジタル人材」を確保・育成することの両軸が重要と考えられています。

 これからの時代、どんな企業・業種であってもこの変革から逃れることはできません。ビジネスパーソンとして身につけるべきITスキルを学ぶための第一歩として、ITパスポートは注目されているのです。
 そのため、近年意識が高まっているリスキリングの一貫として取得を目指す非IT企業勤務の社会人も多いようです。

ITパスポート取得の目的

 では実際のところ、社会人のITパスポート取得にはどれほどのメリットがあるのでしょうか。スキルアップ研究所の調査から実情を探りました。

 まず「ITパスポートを取得した主な目的」から。最も多かったのは「現在の職業で活用するため」であり、「会社で取得が必須だった」と合わせて現在の職場での活用を意図した回答は66.5%と半数以上にのぼりました。

 そのほか「就職活動に活かすため」「転職活動に活かすため」「副業での活用をするため」といった今後想定する働き方を理由とした回答も合計15.7%となり、日々の業務に直結する試験として取得を目指す人が多いことがわかります。

ITパスポートの実用性

 続いて、ITパスポートを取得したことによる「仕事で感じた具体的な成果」(複数回答可)を見ていきます。

 圧倒的に多かった回答は「業務効率が向上した」(71.9%)。実用性のある学びとして業務の中でポジティブな結果を感じている人が多いようです。
 「IT関連の課題解決がスムーズになった」「ITプロジェクトへの参加・担当が増えた」「チーム内でのITサポート役として頼られるようになった」というように、身につけたIT関連の知識が業務に直接つながったことを示す回答もあります。

ITパスポートの効率的な学び方

 働きながら学習時間を捻出するのは難しいもの。効率的な学習を心がけたいところです。

 ITパスポートを取得した人へ「学ぶ際に最も重視するべきポイント」を聞いたところ、圧倒的に多かったのが「過去問演習の徹底」でした。過去問題からは取り扱う内容だけでなく傾向と対策もまとめて学ぶことができます。

 ITパスポートの公式サイトでは過去問題が公開されています。本格的に勉強を始める前に一通り解いてみて自分の苦手な分野を探ったり、試験形式での演習に使ったりするのもいいでしょう。

ITパスポートの学習手段

 学習手段としては市販の教材や講座が定番ですが、最近はYouTubeといったインターネット上の無料コンテンツも充実してきました。ただし、SNSなどでの学習は体系的な学習・理解にはつながりづらいという傾向もあります。

 実際、資格取得者も75.9%と4人に3人が「市販の教材」を主に使用して学習したと回答しています。一方で講座形式は通信、通学を合計しても15.7%にとどまり、独学かつ自分のペースで学ぶスタイルを選択している人が多いことがうかがえます。

 以前は市販の教材というと出版物を指しましたが、最近はウェブを主体としたサービスも増えてきました。
 ウェブ完結で勉強できる学習システムのメリットは場所や時間を問わず取り組みやすい点です。まだ身についていない内容に重点を置いた振り返り、学習進捗の見えやすさといったシステム管理ならではの機能も優秀といえます。

まとめ

 ITパスポートは、IT業界以外の社会人にも開かれたITの基礎知識をつける第一歩となりうる試験です。実際に多くの非IT企業に勤める社会人が受験し、業務効率の向上や課題解決能力の強化など、日々の業務で活かしています。
 研修やリスキリング施策のひとつとして取得を支援する企業も増えてきました。新人教育への要素追加、デジタル人材として育てていく想定の社員のスキルアップなど、キャリア設計に組み込みやすい試験として今後も活用されるでしょう。

 今後さらに進むであろう「デジタル人材」が求められる時代を生き抜くためにも、IT知識習得の第一歩としてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

スキルアップ研究所「ITパスポートの取得に関する実態調査」: https://reskill.gakken.jp/4806
ITパスポート試験 : https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/index.html
経済産業省 : https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/

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