COLUMN
研修コラム
みなさんの組織はチームになれているでしょうか?
昨今、JOB型の組織や、フラット型の組織を掲げている企業が増えてきています。
JOB型に向けては、個人の専門性を高める能力アップ施策や、制度を取り入れているところも増えているのではないでしょうか。
また、フラット型組織に向けては、既存の評価制度を変えたり、組織の仕組み自体を変えることを検討しているかもしれません。
そういった目に見えるハードな部分も大切ですが、それだけではなく、チームになっていくことや、チームメンバーになる力、チームになる手段、といったソフトな部分に目を向けることも重要です。
今回は、チームになっていくために必要な、ソフト面に関わるいくつかの考えをご紹介していきます。
そもそものマインドセット
そもそもの考えとして、従来の日本では阿吽の呼吸的な発想でのやりとりを、上司が部下に強いることがありました。
もちろんそうではない企業も多いですが、実際に体験したことがある人も多いのではないでしょうか。
阿吽の呼吸は、ある程度の共通の組織文化や規範、そして一緒に過ごす時間が必要となります。
しかし、今後JOB型や、フラット型の組織になっていくにあたっては、新たなチームができたり、複数のチームにまたがって仕事をしていくということが普通になってくるでしょう。
時間を長く取る、という悠長なことは言っていられなくなります。
そんな時に、メンバーが共通で持っておける、チームになっていくためのマインドや考えがあります。
今回、その中のいくつかをご紹介します。
チーミング
ハーバード大学教授である、エイミー・エドモンドソンが提唱した考えです。
心理的安全性を世の中に広めた人と言うとわかる人も多いかもしれません。
ゲームでもチーミングという言葉があるようですが、それとは意味が違いますのでお気を付けを(ちなみに、ゲームではチームを組むように指定されていないのに、ルールを無視してチームを勝手に組むことを指しており、全く意味合いが違います)。
簡単に言うと、「チーム」は名詞ですが、「チーミング」と動詞にすることで、日々の中で、学習をし続ける必要性を訴えています。
ここでの学習は、本や各種媒体から知識を取り入れることではありません。
チームになっていくための、「目的/目標」「仕組み」「動き方」「雰囲気」「役割」等の共通言語を、日々のトライ&エラーで作っていき、共に成長していくことを指しています。
それぞれが、「一人」としてとらえるのではなく「チームの一員」という意識と、チームをしていく/チームになっていくという考えが重要です。
成功循環モデル
リーダーや管理者の方々は、年間、4半期の決算時、週次、月次と日々数字を追うことが多いのではないでしょうか。
株式会社、特に上場会社において、その考えは重要です。
しかし、数字が全面に来ることは危険かもしれません。
MIT(マサチューセッツ工科大学)組織学習センターの共同創始者であり、システム思考にも深く関わっている、ダニエルキムが言うには、成功のためには、まず関係性が重要であると言っています。
ここでは、うまくいくチームといかないチームでは、チームの在り方が全く違う、ということを明らかにした、成功循環モデルを紹介します。
まず、うまくいかないチームの流れを、バッドサイクルと呼んでいます。
バッドサイクルでは、①結果の質 ②関係の質 ③思考の質 ④行動の質 また戻って①結果の質という流れとなります。
まず、チームとしての状態が整っていないうちから、結果を求めるため①成果が上がらず、成果が上がらない状態になるので②対立や押しつけが起こります。②により恐怖が増えることで③受け身や失敗回避、自己保身に走りがちになり④さらに消極的になって、ますます結果がでないというサイクルになります。
逆にグッドサイクルでは、①関係の質 ②思考の質 ③行動の質 ④結果の質 また戻って①関係の質 という流れになります。
このサイクルでは、まずは、チームメンバー同士の①対話やお互いを尊重するところから始め、②様々なアイデアや気づきを得ていきます。そこから失敗を恐れずに③新たな挑戦や助け合いが起こることで、④結果がついてきて、さらに関係性が高まっていくという流れになります。
感覚としては、グッドサイクルのほうが、合理的だと感じられると思います。
しかし、ご自身のチームや組織はどうでしょうか。意外とバッドサイクルと化しているチームも多いかもしれません。
多様性の必要性
FBIでは、9・11までは白人のエリートを主にメンバーとして採用していました。
しかし、9・11が起きたことでメンバー採用に人種の幅を出すことになりました。
それはなぜかというと、どうしても白人という文化圏と、中東の文化圏では、出生や文化の違いによって、見えてくる世界観が大きく違うためです。
いくらエリートだったとしても、認知の幅が狭くなってしまう、受け取れる情報に偏りがでて、解決できるものもできなくなってしまうということで、採用の幅を持たせました。
仕事の現場でも、同じく認知の幅を出さないことには、イノベーションは起こせません。
図のとおり、認知の多様性を受容できないリーダーがいる場合は、その幅の中でしか成果は出ませんが、みながそれぞれを受容できれば、多様な成果につながります。
チームになっていく段階~タックマンモデル~
上記では、チームになるためのマインドセットをお伝えしましたが、チームになるためにはいくつかの段階がある、と知ることも重要です。
いきなり良いチームになることは難しいですが、それでも自分たちのチームがどの部分にいるかを知ることで、その時にチームの中で何をすればいいかも見えやすくなります。
チームビルディングの有名な考えに、「レンシオーニモデル」と「タックマンモデル」があります。
レンシオーニモデルは、チームの機能毎に対処していく事柄の違いを明らかにしています。
タックマンモデルは、チームの関係性、効果性が高まっていく過程を4つの段階で明らかにしていきました。 今後はプロジェクト型のチームが増えていくだろうことを考慮して、今回はタックマンモデルについてお伝えします。
形成期
「形成期」は、メンバー同士でお互いをほとんど知らず、まだチームとしての目標や目的も共有化されていない状態です。
会社においては、例えば、プロジェクトが開始されメンバーが指名された状態がこれにあたります。
または、ずっと同じ業務を続けている部署で、実はほとんどお互いを知らない状態もこれにあたるかもしれません。
ここでは、お互いを知ることが重要です。しっかりと自己紹介するだけでなく、細かくコミュニケーションを取る場を設けていきましょう。
混乱期
次が「混乱期」です。
この段階がチームになるために一番重要な時期です。
混乱期では、個人の考えの相違や、チームの目標や目的についての意見の食い違い、人間関係のもつれ、具体的な業務の進め方に対立が生じます。
これは子供から大人になった過程での反抗期のようなもので、チームとして正常な成長の過程です。
メンバー同士が各々の意見を正しく衝突させることで、相互理解が深まり、統一期への移行が可能になります。しかし、それぞれの相違を言葉にできないと本当の意味でお互いを知り、目的を同じくすることが難しくなります。
先ほどの、多様性をここで表に出せるか、出さないかで、今後のチームの効果性が大きく変わってしまいます。
この混乱期までが、いわゆる「グループ」であり、「チーム」としては機能していない状態です。日本では、ほとんどが効果的な「混乱期」を過ごせずに、形成期と混乱期の行き来に終始してしまいがちです。
しっかりと互いの違いをぶつけてみましょう。
混乱期はとても重要だということを記憶しておきましょう。
統一期
「混乱期」を超えれば、次は「統一期」です。
これは、混乱期を乗り越え、チームとしての目的や業務の進め方、各メンバーが何をすればいいのかを自分事として考えられている状態です。
この段階からチームと呼ぶことができます。チームの仕事の進め方も、「誰」が言ったかではなく、「何」を言ったかで物事が決まっていきます。
ここで改めて、目的や目標を与えられたものでなく、自分たちの言葉に再定義しなおすことも、おすすめです。
機能期
最後の段階が「機能期」です。
これはいよいよチームに結束力や連動性が生まれ、相互にサポートができるようになっている状態です。
チームとしての創造的な解を出していける段階と言えます。
いわゆるメンバーそれぞれが掛け算の関係性になっている状態ともいえます。
以上の「形成期」「混乱期」「統一期」「機能期」が、チームになっていくための4つの段階です。
チームになる仕組み~OKR~
ここまで、チームになるためのマインドセット、段階についてお伝えしました。
最後にそれらを支えるチームの仕組みについてお伝えします。
インテルの伝説的な社長である、アンドリューグローブが考えたチーム運営の仕組みです。
GoogleやMETAで取り入れられており、多くのシリコンバレー企業にて使用されています。
OKRとは
OKRとは、Objectives and key resultsの略称となります。
OKRは、1つのobjectiveと3から5つのkey resultsで構成されています。
オブジェクティブはいわゆる目標のことです。定性的な目標となります。
キーリザルトは、数値で管理できる定量的なものです。成果指標と訳されます。
要は、結果につながる重要な数字のことです。
会社の大きな、O(目標)を掲げ、それに紐づくKR(成果指標)を設定していきます。
それを更に、各組織、各チーム、各個人へと同じようにOとKRに落とし込んでいくことで、組織全体に一貫性のある行動と成果を促す事ができます。
OKRの流れ
OKRでは、まず会社の大きな目標を掲げます。そして次に、それを達成するために必要な指標を3つから5つ考えます。
この時に、重要なのが、数値はSMARTにすることです。SMARTとは、Specific(具体的に)に、Masurable(測定可能な)、Achievable(達成可能な)、Related(経営目標に関連した)、Time-bound(期限の設定のある)数値という意味です。
また、数値といっても、結果的になる数字(売上~~円、目標100件受注等)といったものではなく、そこにつながるであろう数字(テレアポ100件、HP流入50件等)が重要といわれています。結果を書くことのほうが容易かと思いますが、その過程を考えることは重要です。
よくある目標に、風吹けば桶屋が儲かる、という言葉のような、論理の飛躍がみえる、後は現場に任せたというものがありますが、それではいけません。
そうではなく、風が吹けば、砂が舞い、ほこりが立ち、ほこりが目に入り云々という流れをしっかりと考えましょう。
そして、その中でも需要なキーが何かを考え数値にしていきます。
OKRのキーポイント
OKRでは、基本的には達成可能性が70%程度の大きな目標を掲げることが良いとされています。
これは、挑戦することに恐れを抱かず、かつムーンショット目標のように大きな志を生むからと言われています。
しかし、はじめてOKRに取り組むチームや、今までの成果目標に慣れているメンバーが多い場合は、もう少し小さな、具体的に達成可能な目標にすることもありです。
どちらを目標にするかは、組織やチームの雰囲気を汲みながら決めていきましょう。
そして、このOKRは1ヶ月から3ヶ月をスパンとして目標を決めていきます。
できるだけ高速で目標を回していくことで組織、チームの成長を早めていきます。
またスパンの終了時には必ず振り返りも取り入れていきましょう。
この振り返りが、組織をより強くし、柔軟性を持たせていきます。
個人だけではなく、チームや組織として、何が寄与して、うまくいき、ダメになってしまったのかを考えましょう。
また、その際には、KPTといって、何を続け(Keep)、何が問題になっており(problem)、何に取り組むのか(Try)というフレームも参考にしてみましょう。
さて、ここまで、組織をチームにしていくためのいくつかの考えをご紹介しました。
是非、自分たちの組織やチームでも実行して、より良い関係からより良い成果を生み出していきましょう。
この記事を書いた人
- 栗林 陽 / 株式会社TOASU 事業開発部/マネジャー
- 大学卒業後、大手IT業界、海外経験を経て現会社へ入社。日本の継続的、健康的な成長を願い、企業向け研修の企画、営業に従事。その後、営業だけでなく0からの研修企画、作成が認められ、社内での新規事業のリーダー職を担う。現在は「チーム」へ向けた今までにないサービスを作成中。座右の銘は「少しでも良い社会のために」。本業の傍ら、地域活性にも参画。大学まで続けたサッカーは今でも毎週行っている。