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研修コラム

コーチングとは?意味からスキル資格までわかりやすく紹介

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コーチングとは何か。おそらく、マネジメントや人材育成に必要なのだろうなということは、多くのビジネスパーソンにも察しがついているかもしれません。

ひとことでお伝えすると、「対話を通じ、組織や個人において『達成できる!』と思える状態に導く」人材開発の手法のことです。

話題になっているにもかかわらず、コーチングはなぜ理解するのが難しいのか。コーチングでは人や組織の個性に向き合い、引き出します。組織文化や個人の得意不得意といった個性そのものは、順位づけできるような性質ではなく、ましてや目に見えるものでもありません。それゆえ、個性を扱うコーチングについても小難しい印象となってしまいます。

さらに、コーチングでは、成長をサポートするため時間がかかります。すぐに結果が見えづらい性質であるために、わかりづらいのです。

本記事では「コーチングとは何か」という問いに対し、コーチングが普及するまでの歴史やコーチングのメリット、コーチングに必要なスキル、そしてコーチングの資格という3点から答えていきます。

本記事を通し、管理職や人事部門の方はもちろん、若い世代のビジネスパーソンにも、コーチングの意味や必要性を理解いただけることを願っています。そして、「コーチングスキルを身につけたい」といった行動の変化のきっかけにもなれば幸いです。

コーチングとは

コーチングとは何か

コーチングとは、対話を通して人間や組織の潜在的な力を引き出し、目標達成や問題解決に導くことです。コーチングの語源である、「コーチ(coach)」には、「馬車」の意味があります。馬車の仕事は、乗客を引っ張っていくのではなく、乗客を目的地まで送ることですよね。転じて、コーチ(コーチングをする人)は、組織や個人の目的にたどり着くためにサポートする存在であるととらえられるようになりました。

目標達成のサポートならコーチング以外でもできるのではないか。そう思った方も多いことでしょう。コーチングでは、正しい答えを教える(ティーチング)、答えのない中で解を見出し導く(コンサルティング)にあるような、上の立場から教えたりアドバイスをするアプローチを取りません。コーチの役割はあくまで相談者と対等な立場に立ち、相談者に問いかけながら双方向でのコミュニケーションを重ね、最終的に相談者が自ら考え行動できるようにはたらきかけることなのです。コーチングについてもっと知りたい方は、別記事でも紹介していますのでぜひご覧ください。

歴史あるコーチング

■1980年代以降 コーチングが社会に普及し始める

コーチングは1980年代に米国において普及しました。当時の背景としては、米国企業が従来の職務別給与から技能に応じた給与体系に移行するようになったことが挙げられます。パフォーマンス重視に切り替わったことで、人材のマネジメントにも質の高さが求められるようになったのです。

1990年代には米国に非営利団体 International Coach Federation (ICF,国際コーチング連盟)などの育成機関が設立されました。日本でも初のコーチ養成機関であるコーチ・エィ(当時はコーチ・トゥエンティワン)が設立され、コーチングを体系的に学ぶプログラムの提供が始まりました。

導入された当時は、個人に焦点を充てたプログラムが中心でしたが、次第に組織に対する手法としても広まっていきました。人材開発に携わっている私のからしても、組織開発に携わっている方にコーチングのプロスキルを携えている方は少なくないという印象があります。

整理すると、コーチングは教育としての歴史と実績があり、かつビジネスにおいても有用であると学術的にも証明されている手法なのです。

コーチングのメリット

この1年のうちに、仕事について学び、成長する機会がありましたか。組織へのエンゲージメントを測定するために、米国の調査会社ギャラップが米国の心理学者フランク・シュミットと共同開発した質問集「Q12」の一つです。自身が成長していると実感できることが働く上での幸福度に影響していることを意味します。定量的な目標達成は誰しもが嬉しいものですが、達成の過程において、前向きな気持ちで発想を広げて考え、まだ見ぬ答えにたどり着くことこそが大事である。この考えは多くのビジネスパーソンが納得するところでしょう。コーチングの真価が発揮されるときです。そこで、コーチングのメリットを2点紹介します。

■行動変容をうながす

コーチングにより、相談者の行動変容をうながすことができます。繰り返しになりますが、コーチングでは、コーチからの問いを通じ、相談者の潜在的な能力や考えを引き出していきます。相談者にとっては、自分の伸びしろに気づき、考え方や行動の選択肢を増やすことができます。コーチングの回数を重ねるごとに、相談者は考え直し、行動し、振り返りさらなる成長を目指します。相談者が納得感をもって行動に移せるという点は肝要です。

■信頼関係を構築できる

コーチングを通し、信頼関係を構築することも可能になります。コーチングにおいては、旧来のマネジメントのように、上からの管理や指示で部下を動かしていくアプローチを取りません。相談者と対等な立場から、コーチと相談者がお互いについて話し合うことで、心理的安全性(自分に正直な状態で安心して考えを発現することができる)を保ちつつ、相談者が安心して前進していくことができるのです。

コーチングに必要なスキル

「上司は面倒見が良い方なので助かっています」「今の部長は現場の意見をしっかり聞いてくれます」。職場の人間関係については、とかく育成者の性格として語られがちです。しかし、「1-2 歴史あるコーチング」でも記したとおり、コーチングという確立された手法を用いることで成長をうながすことは可能です。そこで、コーチングに求められるスキルのうち、基本的なものに絞って紹介していきます。

環境設定

■ラポールの形成

「ラポール」とは、「コーチと相談者の相互の信頼関係」を意味します。主に臨床心理学にて使われる専門用語です。コーチングの場で使われることの多い用語ですが、要するに信頼関係が土台になっているいう意味合いです。TOASU(旧ジェイテックスマネジメントセンター)のコーチング研修においても、受講者様より「参加者がどんな発言をしても、講師の方が必ず肯定されており、安心感があって発言しやすい雰囲気だった。(中略)講師の方のような対応を、今後は部下に対して実行しないといけないと感じた」とのコメントをいただいたことがあります。ラポールが形成されている例ですね。

■環境設定

環境設定においては、物理的環境と心理的環境の両方に配慮する必要があります。当たり前のことだと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「話の内容や状況にふさわしい場所や時間を選ぶ」「パーソナルスペースを十分にとる」「圧迫感を軽減するために座るときの位置関係は対面よりも隣や斜めにする」といった対応が求められます。

傾聴

聞き上手という言葉がありますよね。「傾聴」という言葉はまさに、相手の話に耳を傾けながら聴くことを意味します。相手の本当の悩みや問題を引き出す上で欠かせないスキルです。傾聴するときに意識すべきことは、声や表情、態度、ならびに姿勢です。加えて、相づちを打つ、相手の言葉を繰り返す、途中で相手が混乱している場合には要約して伝えることも重要です。

質問

コーチングスキルのうち、最も重要とされるのは質問スキルと言っても過言ではありません。質問の目的は、相談者自身に気づいてもらうことです。日常生活においては情報収集のための質問をする場面が多いですが、コーチングでは引き出す過程に重きを置くのですね。質問といっても、コーチングセッションの全体像が見えないと、どのような質問をしたらよいのかイメージがつきづらいことでしょう。

承認

コーチングの目的は、相談者が自ら考え行動に移せるようになることです。自ら前に進んでいくには不安が伴います。そこで、コーチには、相談者の存在を承認すること(存在承認)、行動を承認すること(行動承認)、そして、結果を承認すること(結果承認)の3つの承認が求められます。相談者が自己肯定感(ありのままの自分を認めること)をもって前進できるよう、まずは相談者の存在を認める。次に、結果を問わず相談者が自ら考え行動したことを認める。そして、言わずもがな、結果を出したときに認める。実際に、TOASUのコーチング研修受講者からは、「部下の中には相手から全然コミュニケーションを取ってこない人もいるので、『承認』スキルを使う。そして、自分から数分でもいいので声をかけて、信頼関係を作ることを実施するべきであると思った」というように、承認がいかに大切かを実感したという声も寄せられています。

コーチングの資格

コーチングスキルを身につける手段としては、企業におけるコーチング研修(もしくは、管理職向け研修にコーチングの手法を取り入れた研修)が一般的です。ただし、研修を受けることができない方やより高度なコーチングスキルを身につけたい方は、資格を取ることを検討してみてもよいでしょう。コーチングには国家資格がなく、法律による規制もありません。ですから、コーチングについて統一した基準は存在せず、民間団体や企業が独自の基準を設けています。

コーチング資格を取得するまでのプロセスとしては、民間団体が主催する認定コース(講座)を受講の上、トレーニングやテストに合格する流れが一般的です。ただし、主催団体により条件が異なる点に注意しましょう。本記事では、コーチングを主催する団体のうち、代表的な機関を3つ取り上げます。(2023年4月時点。最新情報は主催団体の情報をご照会ください)

一般財団法人生涯学習開発財団

文部科学省所管の一般財団法人生涯学習開発財団において認定されているコーチング資格があります。株式会社コーチ・エイというコーチ養成機関にて学ぶことにより取得可能です。コーチ・エイは国内初の養成機関であることから、「日本におけるコーチングのパイオニア」とも称されています。認定資格は3種類あり、それぞれ「認定コーチ」「認定プロフェッショナルコーチ」「認定マスターコーチ」となっています。

日本コーチ連盟(JCF)

日本コーチ連盟(JCF)が認定するコーチング資格です。取得のためには、連盟とは独立した専門機関であるコーチング技能養成校「コーチアカデミー」で教育を受けます。資格は大きく分けて2種類あります。コーチとして活躍するための資格(コーチ資格)と、 JCF規定のインストラクターとして活躍するための資格(インストラクター資格)です。

一般社団法国際コーチ連盟(ICF)

米国で設立された世界最大級のコーチ養成機関が国際コーチ連盟が認定するコーチング資格です。ICFのコーチング資格は国際資格です。取得までのハードルが高いことで名高いものの、取得すると世界150か国以上で通用する資格となっています。認定資格は3種類あります。難易度については、易しいものから「アソシエイト・サーティファイド・コーチ(ACC)」「プロフェッショナル・サーティファイド・コーチ(PCC)」「マスター・サーティファイド・コーチ(MCC)」となっています。なお、ICF公認の日本支部は「国際コーチング連盟日本支部(通称 ICFジャパン)です。

まとめ

❝「(受講者様からの声)研修の内容をもっと早く知っていれば、もっと早く行動に移せたかもと思うと、ここまでの1年が勿体ないと感じる」❞


ここまで、コーチングについての長い記事を読んでくださりありがとうございます。コーチングには歴史と権威があること、意義があり現代においても必要とされつづけていること、そして、コーチングスキルを身につける方法が確立されていることをお伝えしてきました。

今読んでいただいているみなさまに、コーチングについての概要を知ることができた、もっと知りたいと思うようになったと感じていただけたのであれば嬉しいです!

TOASUでもコーチング研修を実施しています。とある企業様で実施したコーチング研修のアンケートでは、受講者全54名に対して、50名が「研修内容が身になった」(満足度約93%)との回答をいただいています。研修では、“「知っている」を「できる」にする”を掲げており、実際に受講者同士で様々な部下タイプ役になりきり、実際に受講者がコーチングを実践するといった演習も行っています。

この記事を書いた人

栗林 陽 / 株式会社TOASU 事業開発部/マネジャー
大学卒業後、大手IT業界、海外経験を経て現会社へ入社。日本の継続的、健康的な成長を願い、企業向け研修の企画、営業に従事。その後、営業だけでなく0からの研修企画、作成が認められ、社内での新規事業のリーダー職を担う。現在は「チーム」へ向けた今までにないサービスを作成中。座右の銘は「少しでも良い社会のために」。本業の傍ら、地域活性にも参画。大学まで続けたサッカーは今でも毎週行っている。