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研修コラム

中堅社員の研修、何が必要? 若手との認識ギャップから見る育成ポイント

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ミドル層の育成ポイントとは

 40~60代の社員、いわゆるミドル層の社員をどのように活躍させるかは、企業の成長にも直結する重要な課題のひとつです。
 近年、新入社員の減少はもちろん、定年延長や継続雇用制度の拡大、スキルベース転職の普及などから、中堅社員の働きは重要になっています。さらに若手社員と経営層を繋ぎ、社内の円滑な意思伝達を支える役割も期待されており、まさしく多方面の活躍が期待されているといえるでしょう。
 その反面で業務負担の増加も懸念され、企業としては軽減のための適切な仕組みづくりが求められます。HR業界でも「ミドルマネジメント」「中堅社員研修」「コーチング」といったキーワードへの関心は年々高まっています。

 今回は特に中堅~ベテランとして力を発揮し始める世代である40代社員に注目してみました。
 40代社員は自身の働き方をどのように考えているのか、そして一緒に働く20~30代の若手社員たちは客観的にどう認識しているのか。それぞれの思考とそのギャップから、企業研修などで行うべきミドル層の育成ポイントを探ります。

貢献している点は?

 今回の調査は、スキルアップ研究所が40代のオフィスワーカーについて①当事者の目線②20~30代の若手の同僚社員からの目線、両面からアンケートを行ったものです。

 まずは「どんな点で貢献していると思いますか(複数回答可)」。
 若手社員から評価されたのは「長年の経験に基づいた危機管理力・的確な判断力」「組織を前に進めるリーダーシップ・推進力」。特に後者は40代社員の自己認識を20ポイント以上も上回っています。中堅社員として業務を動かしていく力は、彼ら自身が想定するよりも備わっているということでしょう。

 一方で、「新たな知識やスキルを素早く学習して仕事に活かす吸収力」「社内メンバーのモチベートや社内関係の調整能力」といった点は、40代社員の自己評価を下回る結果となりました。特にリーダーシップを評価するかたわら調整能力は低く見ている、という点は、若手社員に対するマネジメントの状況として実績不足を感じます。

期待している点は?

 続いて「どのような点を期待していますか(複数回答可)」。もっとも期待が高かったのは「長年の経験に基づいた危機管理力・的確な判断力」であり、先程挙げた貢献している点と一致しました。若手社員は40代社員の判断力を高く評価しており、これからも発揮していってもらいたいと考えていることがわかります。

 反対に、40代社員の自己認識を大きく下回ったのが「新たな知識やスキルを素早く学習して仕事に活かす吸収力」、つまりリスキリング力でした。若手社員はミドル社員が持つ知見を心強く思う一方で、世の中の新しいビジネスのスピードに適応していくための学び直しは足りていない、もしくは追いつけていないと感じているようです。

課題を感じる点は?

 若手社員が課題と感じている最大のポイントは「ポジションに甘んじており、目標や成果に対する意識が低い」点でした。これは40代社員の自己認識とポイント数までほぼ一致しており、コミットへのさらなる注力が求められています。

 そしてもっとも認識のギャップが大きかったのは「ハラスメントなど、社内の空気を乱す振る舞いをする」点であり、40代の自己認識を14ポイントも上回る結果となりました。40代社員が自覚するより、若手社員は厳しい感覚で見ていると考えた方がいいでしょう。

ミドル社員の強みと課題

 では上記の調査結果から、ミドル層の社員が持つ強みと今後伸ばしていくべき部分、そして課題とその改善策を考えていきましょう。

 まず強みの一つはリーダーシップの発揮です。プロジェクト単位でチームを動かす場面も多いミドル層は、主体的なリーダーシップの発揮が求められます。彼らがさらに自信をもって進められるよう、企業側もサポート体制を整えることが大切です。

 経験や知見を企業全体で活かす工夫も重要です。積み重ねられた豊富なノウハウはOJT制度なども活用して若手社員に共有し、積極的に継承していきましょう。

 一方、解決すべき課題と考えられるポイントは、まず最新の知識の学習と業務への反映です。先程も述べたように過去の経験則は重要な財産ですが、それだけに頼らず、最新の業界トレンドや技術を取り入れた判断ができることが期待されます。
 ミドル層が学び直しに積極的な姿勢を見せていくこと自体もプラスとなるので、企業側もリスキリング環境の整備をともに進めるべきです。

 もう一つの課題がマネジメント・コミュニケーションスキルの向上です。リモートワークの増加などもあり、これまでとは異なるコミュニケーション技術が必要とされています。適切な指導・対話を身につけられるよう、昇進時のマネジメント研修やコーチングなどの学習機会を用意しましょう。
 またハラスメントなどの振る舞いに関して認識のギャップがあることから、コンプライアンス研修の定期的な実施といった意識向上に関する施策も考えられます。

まとめ

 ミドル層の社員は、企業の中核を担う非常に重要な存在です。

 だからこそ、企業は若手社員の育成に注力するだけでなく、ミドル層の社員に対しても継続的な「人材育成」の機会を提供することが求められます。
 具体的には、最新の業界動向や技術、マネジメント手法に関する研修やワークショップ、さらには社内外のセミナーや勉強会への参加を奨励するなど、ミドル層が持つ強みをさらに引き出し、磨きあげる環境づくりが重要です。

 適切な人材育成を進めることで、ミドル層の社員は自らの専門知識や経験を基盤に、新たな知識やスキルを習得し、変化する市場環境や企業課題に柔軟かつ迅速に対応できるようになります。企業全体の競争力を高め、成長と持続的発展につなげるためにも、企業側から積極的に育成環境を整えていきましょう。

参照:
スキルアップ研究所「40代社会人とそのリスキリングに関する意識調査」https://reskill.gakken.jp/3229

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